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ラッシャー貴子|イギリス

王様は大変な職業、新国王チャールズ3世誕生

 すぐに王になったとはいえ、正式な即位布告は改めて9月10日に行われた。ロンドンのセント・ジェイムズ宮殿で「王位継承評議会」という集まりが開かれ、枢密院(現職・元職の下院議員幹部や貴族などで構成)、上級官僚、英連邦諸国の代表を前に、チャールズ3世の即位が布告された。ここでも人々は「国王万歳!」と叫び、トランペットのファンファーレが響き渡り、礼砲が放たれた。女王の死後に一度は半旗になった旗も、この式典から26時間だけ通常に戻されてお祝いモードになった。喪中だけれども。

BBCニュースジャパンのTwitter投稿より、9月10日に行われた王位継承評議会の様子。この式典がテレビ中継されたのは史上初のことだった。この後、ほぼ同様の即位布告の儀式は全国の大きな都市でも行われた。ちなみに、戴冠式までは準備のために少し時間が空くのが通例で、チャールズ国王の式典も来年になりそうだ。

 服喪期間の国王のスケジュールは超過密だった。危篤の知らせを受けてロンドンからスコットランドに飛んだ日に女王が亡くなり、翌日にロンドンに戻ってバッキンガム宮殿でトラス首相と会見。宮殿前に集まった市民から直接弔問を受け、夜には先ほど挙げたスピーチがテレビで放映された。

 その後、葬儀にいたる10日の間に国王が出席した行事は、先ほどの王位継承評議会での式典とスピーチ、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドを訪れての首長との会見(英国はこの3つの「国」とイングランドの「4か国」から成る「連合王国」だ)、議会で国王としての初スピーチ、弔問に訪れた英連邦首脳との会見、女王の棺を移動する葬列に徒歩で参加(エディンバラとロンドンの2回)、それに伴う礼拝への参列と通夜の式典として安置された棺の不寝の番(やはり2回ずつ)、葬儀前日には参列者の各国の元首や首脳を招いて宮殿でレセプションなどなど。合間には、行く先々で弔問に集まる市民と直接言葉を交わしていたし、式典用の軍服への着替えやスピーチの打ち合わせもあっただろう。

 こうして書き出すだけでも目が回りそうだし、それぞれ気の張る場のように思える。いくら自家用飛行機や自家用車での移動といっても、朝ロンドンにいたと思ったら夕方にはエディンバラ、なんていうこともしょっちゅうで、見ているこちらまで慌ただしかった。服喪期間に国王が公の場に姿を見せなかったのは1日だけだった。

 いつかはこの日が来ると覚悟はしていただろうけれども、チャールズ国王はこれを母親が亡くなった悲しみの中でこなした。しかも、新しい英国国王に注目する世界中のメディアがずっと張り付いていたし、市民と接すればたまに、「光熱費の高騰で生活が苦しいのに、国葬にも税金を払うなんて!」と面と向かって文句を言われたり、「(またインクが漏れるといけないから)念のためにどうぞ」とペンを差し出す強烈なブラックジョークに見舞われたりする。ますます消耗しそうだ(ちなみに国王はこのペンを手元に残したらしい。さすが、ジョークのセンスはおありなのね)。

 国王がインク漏れで癇癪を起こしたのはこの多忙なスケジュールの真っ最中だったので、あの映像を見た時、真っ先に「疲れてるんだろうなあ」と思ったのだった。忙しい公務には慣れているのだろうけれど、失礼ながら新国王は73歳だ。

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著者プロフィール
ラッシャー貴子

ロンドン在住15年目の英語翻訳者、英国旅行ライター。共訳書『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』、訳書『Why on Earth アイスランド縦断記』、翻訳協力『アメリカの大学生が学んでいる伝え方の教科書』、『英語はもっとイディオムで話そう』など。違う文化や人の暮らしに興味あり。世界中から人が集まるコスモポリタンなロンドンの風景や出会った人たち、英国らしさ、日本人として考えることなどを綴ります。

ブログ:ロンドン 2人暮らし

Twitter:@lonlonsmile

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