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England Swings!

ラッシャー貴子|イギリス

年に一度のロンドン建物探訪、オープンハウス

 オープンハウスにはもう何度か出かけている。これまで訪れた建物で印象に残っているのは、何といっても外務省だ。立派な建物の外観も洗練されているけれど、中に入るとまるで高級ホテルか宮殿のようにきらびやかで、英国のエリートはこういうところで働くものかと恐れ入ってしまった。それから英国の中央銀行であるイングランド銀行も思い出深い。行列覚悟で張り切って向かったのに建物に入れなかったのだ。というのも、ちょうどリーマンショックで金融界が大騒ぎだった2008年のことで、日曜にもたくさんの人が働いていたのだった。代わりに隣接の博物館を見学できたのでよかったけれど、文化も社会の動きとつながっていることを実感した。

 ちなみに、これまでにオープンハウスで外務省イングランド銀行ロイヤルバレエ・スクールの建物を見学した時の様子を個人ブログに書いているので、ご興味のある方はそれぞれのリンクからどうぞ。写真が少し小さめだけれど、雰囲気はおわかりいただけると思う。

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オペラハウスでは、許可された場所を自由に歩き回ることができた。立派なカーペットが敷かれた入り口付近を走り回る子どもたち。上演日には大混雑する場所なので、こんな光景は珍しい。筆者撮影

 さて、久しぶりに参加した今年は、日曜に出かけて3つの建物を見学してきた。わたしの好みで古めの建物に偏ってしまったけれど、オープンハウスのリストにはモダンな建物がいくつも入っているので念のため。

 最初の見学地はロイヤル・オペラ・ハウス。英国のロイヤルオペラやロイヤルバレエ団の本拠地になる劇場で、世界でも最高レベルのオペラやバレエが上演されている。

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開演前や幕間は大混雑するポール・ハムリン・ホール。自然光で見ると高い吹き抜けの開放感がさらに際立つようだ。日がさすと、ますます気持ちがいい。筆者撮影

 このコベントガーデンの地に最初に劇場が建ったのは18世紀だが、火災などで何度か建て直されて、今の建物になったのは1857年のこと。さらに1990年代からの大改装によって、今ではかなりモダンな内装も取り入れられている。

 観劇ではずいぶん行っているけれど、午前中の太陽のもとで見るポール・ハムリン・ホールは新鮮だった。実はふだんからチケットを持っていなくてもロビーまでは入れるし、見学ツアーもあるのだけど、オープンハウスでは見学者ばかりだから写真も撮りやすいし、レストランのようにいつもは使われているスペースもじっくり見ることができる。それに生演奏のサービスが楽しめるのも嬉しい。

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この日はリハーサルが進行中で、残念ながらメインステージや客席には入れなかったが、ハープの生演奏とソプラノ歌手の歌を聴くことができた。ロックダウンの後、コンサートに行く機会がなかったので、生演奏が耳にも心にも沁みいった。筆者撮影

 さて2つめの建物はTwo Temple Place。住所がそのまま名前になっているので、日本語だと「トゥー・テンプル・プレイス」になるのかな。繁華街にも金融街にも近いテンプル地区に、19世紀の終わりにアメリカの大富豪アスター氏の執務室として建てられた。

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Two Temple Placeの立派な外観はネオゴシック様式。隣の建物がモダンだったこともあって、繊細な装飾に目がひきつけられた。筆者撮影

 まずは入ってすぐの吹き抜けの豪華な階段にノックアウトされた。手すりを支える細い柱にさえ装飾があって、どれも繊細だ。しかしすぐに、どの部屋も同じように贅を尽くして作られていることがわかった。書斎の本棚さえ細かく華かな装飾に彩られて美しいのだ。

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豪華な階段まわり。壁の繊細な装飾も自然光が入る屋根のステンドグラスも何もかもがゴージャスで圧倒される。仕事関係の人が出入りする建物だったので、入り口で財力を見せつける作戦だったのかもと思ったり。筆者撮影

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著者プロフィール
ラッシャー貴子

ロンドン在住15年目の英語翻訳者、英国旅行ライター。共訳書『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』、訳書『Why on Earth アイスランド縦断記』、翻訳協力『アメリカの大学生が学んでいる伝え方の教科書』、『英語はもっとイディオムで話そう』など。違う文化や人の暮らしに興味あり。世界中から人が集まるコスモポリタンなロンドンの風景や出会った人たち、英国らしさ、日本人として考えることなどを綴ります。

ブログ:ロンドン 2人暮らし

Twitter:@lonlonsmile

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