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ダイバーシティ先進国ベルギーから観る欧州 LGBTQI 事情

ひきりん|ベルギー

LGBT親善大使、今年のミスターゲイベルギー代表が決定!

「なぜ美容師じゃなく庭師?」

歴代のミスターゲイベルギー受賞者が語るには、世界でも最もLGBTフレンドリーとされる現在のベルギーに於いても、ゲイに対しての周囲の偏見や差別が蔓延っている状況を垣間見れる。2017年の優勝者 ジェイミー・ドゥブリーク Jaimie Deblieck さんがこのコンテストに出ようと思ったのは、当時彼が勉強する職業訓練の場での経験がきっかけだった。彼は庭師になろうと職業訓練校に通っていたのだが、そこで周囲に自身がゲイだとカミングアウトすると「なぜ美容師じゃなくて庭師になりたいんだ?」などとからかわれたりして(伝統的に当事者が従事するケースが多く、人々の目にも付きやすい美容師という職業は、ゲイには適任というステレオタイプな見方が今も根強い)、差別的な目線を向けられたりしたことだったと語っている。

Volg de Mr Gay Belgium verkiezing op de voet via www.mrgaybelgium.be of Facebook.com/mrgaybelgium #MGB2018 Fotograaf:...

Jaimie Deblieckさんの投稿 2018年1月28日日曜日


「フ◯ッキング・ゲイ!」と背後から襲撃

この2017年ミスターゲイベルギーに選ばれたジェイミーだが、翌年2018年2月、人口8万人ほどの彼の地元ルーセラールの町で夜遊びした後、早朝一人で家路に向かう途中、ゲイフォビア(嫌悪感を持つ人間)数人に "f*cking gay!" と罵倒された上、背後から襲われ身体を地面に押さえつけられるなどの暴行を受け、入院するという事件に巻き込まれ、当時全国ニュースにもなった。ケガの状況はそれほど深刻でなく、すぐにミスターゲイとしての活動も再開した様子を、インスタグラムで投稿していたジェイミーだが、ミスターに選出されてからも数々のバッシングも受けていたようだった。

背景には宗教的価値観の違いによる軋轢

実はベルギーに限らず、LGBTに対して寛容な西側ヨーロッパ諸国では同様の暴行事件が起きていて、その数はここ数年増加傾向にあるとのデータがある。EU加盟の西側主要国では、EUの基本指針にもある性的少数者への差別解消に向けた教育を進めているが、宗教上同性愛行為を禁止している一部のイスラム系市民などが強く反発、軋轢が生じている。今後も政府方針への不満が同性愛者らへの偏見に基づくヘイトクライム(憎悪犯罪)を増加させる恐れも指摘されている。

ミスターゲイベルギー 2020 としてのヨーレンの活動と将来の夢

ミスターゲイベルギー(MGB)2020に輝いた教育学を専攻するヨーレンの将来の夢は、小学校の先生になること。MGBに選ばれた直後から、ベルギー各地の小学校からジェンダー教育や性の多様性について生徒に教えて欲しいとのオファーが舞い込んでいる。

HLN.be || Vandaag was het zijn eerste schooldag terug als meester Joren. De kersverse Mr Gay Belgium werd met enorm veel...

Mr. Gay Belgiumさんの投稿 2020年10月20日火曜日


Facebook の Mr Gay Belgium アカウントでは、HLN.be の記事の引用をしながら「(中略)LGBTQ+の若者の10人に4人は学校は安全な場所でないと感じていて、自分たちコミュニティに属していない若者(非当事者、異性愛者)の10人に3人は自分たちのようなLGBTQ+当事者のことを嫌っています!これは、教育にはまだ膨大な量の課題があることを示しています。ミスターゲイベルギー2020の彼はこれに取り組み、全ての学校でより多くのLGBTQ+受け入れと多様性をもたらしたいと考えています!」と結んでいる。


Gisteren werd Mr Gay Belgium 2020 Joren Houtevels uitgenodigd door basisschool BS De Cocon om enkele lessen te geven...

Mr. Gay Belgiumさんの投稿 2020年10月28日水曜日


大学のカリキュラム上の教育実習とは別に、独自にこうした活動が出来ているのは本人にとっても大変貴重な体験となっていることだろう。

このミスターゲイコンテストには世界大会があり、ヨーレンはこちらも来年に延期された南アフリカで開催予定の Mr Gay World に出場予定だ。

Profile

著者プロフィール
ひきりん

ブリュッセル在住ライター。1997年ドイツに渡り海外生活スタート、女性との同棲生活中にゲイであることを自覚、カミングアウトの末に3年間の関係にピリオドを打つ。一旦帰国するも10ヶ月足らずでベルギーへ。2011年に現在の相方と出逢い、15年シビル・ユニオンを経て、18年に同性婚し夫夫(ふうふ)生活を営み中。

ブログ:ヨーロッパ発 日欧ミドルGAYカップルのツレ連れ日記 

Twitter:@hiquirin

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