World Voice

サッカーを食べ、サッカーを飲み、サッカーと寝る国より

古庄亨|ブラジル

オリンピックに嫌悪感を持つブラジル人

◼︎レガシープラン達成の重要性

「スポーツに政治を持ち込むな」という誰しも一度は聞いた事があるフレーズがある。

その通りだと思う。

ただし、スポーツの試合や練習にという狭義の意味である。

スポーツイベントの開催、特にオリンピックやワールドカップといった世界的なイベントと政治を混同しないで考える事は不可能である。

思い切り持ち込んで良いし、むしろそれがないと成り立たないと個人的には考えている。

ブラジル人はオリンピックのせいで国が貧しくなっていると感じているので、オリンピックの開催に負のイメージを持つ人が多い。(オリンピック自体が嫌いな訳ではない。)

しかし、仮に汚職や賄賂があったとしても、国の経済状況がオリンピックを契機に良くなっていたら、負のイメージはなかったかもしれない。

世界有数の先進国、インフラが整った経済大国になっていたとして、開催の恩恵を多大に受けていたとしら...。

それでもオリンピックに負のイメージを持つだろうか。

大会の開催前、開催中の時間は有限である。いつかは終わる。

しかし開催後の時間はこれからずっと続いていく、ほぼ無限の時間である。

つまりオリンピック後の開催国の状態は、そのオリンピックの開催の成否を決める大きな要因になるのではないだろうか。

そういう考え方からすると『リオデジャネイロオリンピック』は全てではないにせよ失敗の要素が強いと言わざるを得ない。

リオデジャネイロオリンピック・レガシープランの説明

これらがほぼ実現されていないのである。

一方で日本の方はどうだろう。

俗にレガシープランという考え方はずっとあった訳ではなく、ロンドンオリンピック(2010年)頃から始まったと言われている。

前回64年の東京大会にはレガシープランという言葉はなかっただろうが、レガシーと呼べる物は沢山残った。

首都高速や選手村、東海道新幹線やスタジアム、スポーツ財団など、今も機能し日本のスポーツ界や社会の土台となっているものが沢山ある。

まさにオリンピックのお陰である。

これらがあるからこそ、日本人はオリンピックに好意的で、再び2020年にオリンピックを開催しようという動きになったのではないだろうか。

そう考えると、現状から今回のオリンピックのレガシープランがどの程度達成可能なのかに興味が湧く。

『東京オリンピック2020』のレガシープランは大きく8つのテーマに分かれている。

①競技施設や選手村のレガシーを都民の貴重な財産として未来に引き継ぎます

②大会を機に、スポーツが日常生活にとけ込み、 誰もがいきいきと豊かに暮らせる東京を実現します

③都民とともに大会を創りあげ、かけがえのない感動と 記憶を残します

④大会を文化の祭典としても成功させ、 世界をリードする文化都市東京を実現します

⑤オリンピック・パラリンピック教育を通じた人材育成と、多様性を尊重する共生社会づくりを進めます

⑥環境に配慮した持続可能な大会を通じて、豊かな都市環境を次世代に引き継いでいきます

⑦大会による経済効果を最大限に生かし、東京、そして日本の経済を活性化させます

⑧被災地との絆を次代に引き継ぎ、 大会を通じて世界の人々に感謝を伝えます

これらを元に具体的なプランが練られている。

これに対し、現状を思いつくままに挙げてみよう。

・Covid-19の感染拡大、変異ウイルスの発生

・2020年開催から2021年への開催延期

・開催期間の外国人受け入れ禁止

・有観客の上限規制

・大多数での集まりの禁止

・完全にコントロールする事ができないギャンブル的な選手の体調管理

・開催を見合わせる国も出る予想

・経済的マイナスが出る事が既に確定している

・東京と地方の移動の規制

ざっと挙げただけだが、どちらかというと達成に向けてのデメリット面の方が揃っている。

この状況で一体幾つのレガシーを達成する事ができるのだろうか。

基本的に人と人、地域の交流や世界への発信をベースに練られているプランが多い。

その中で観光客の受け入れ制限、ボラティアの制限、人数・移動制限等は大きなマイナス要因である。

レガシー達成の為にオリンピックの開催是非を語るのは勿論スポーツ的にはナンセンスだろう。

しかし、政治的には大いに関係がある内容である。

正式決定が覆る事はあるのか、状況が変わっても開催を押し通すのか...。

誰もが納得する答えを出すのは難しいだろうが、今だけの事で考えるのではなく、今後の日本の事を考えて決断して欲しいと願うばかりである...。

(了)

 

Profile

著者プロフィール
古庄亨

ブラジル・サンパウロ在住。日本・ブラジル・タイの3ヶ国で、2010年までフットサル選手としてプレー。2011年より5年間、都内スポーツマネージメント会社勤務。2016年ブラジルに渡り翌年現地にて起業。サッカーを中心にスポーツ・教育関連事業で活動中。

Webサイト: アレグリアスポーツアカデミー・サンパウロ

Twitter: @toru_furusho

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