コラム

バイデンの副大統領候補者「カマラ・ハリス」選択の死角

2020年08月14日(金)19時10分

共和党の穏健支持者に切り込める可能性があったバス下院議員やダックワース上院議員などの選択肢を選ばず、自らが弱いラテン系の支持を固めるグレシャム・ニューメキシコ州知事なども選択しなかった。外交・安全保障経験があるスーザン・ライスよりも資金集めなどで役に立つカリフォルニア州選出上院議員であるハリスを選んだのも党内事情に配慮した判断だろう。

つまり、現状のトランプ陣営の混乱状況に鑑み、バイデン陣営は政治的な無理を行うことなく、民主系エスブリッシュメントで固める選択がカマラ・ハリスだと言える。簡単に言うと、トランプ陣営の選挙能力を舐めており、現状以上の攻めを求める選択ではなく、現在の優勢と党内事情を両立させる守りの選択を選んだのだ。

トランプ陣営にとっては対抗策が定まった

トランプ陣営にとっては、カマラ・ハリスという選択は、バイデン陣営の予想外の伸びしろが事実上なくなったことで、選挙戦の逆襲のための目標点がある程度定まる状態になったことを意味する。しかも、彼女は本命とされてきたことから、カマラ・ハリスに対する対抗策の準備は十分にされてきていることは間違いない。今後のトランプ陣営のネガティブ・キャンペーンの展開などは注目に値する。

選挙は最後の一手まで攻め続けることが大事であり、バイデンの今回の副大統領候補者選びはトランプとの選挙戦以外の党内事情などの不純物な要素が見え隠れしており、後々にバイデンの敗着の一手であったとされる可能性も十分にあるだろう。

プロフィール

渡瀬 裕哉

国際政治アナリスト、早稲田大学招聘研究員
1981年生まれ。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。 機関投資家・ヘッジファンド等のプロフェッショナルな投資家向けの米国政治の講師として活躍。日米間のビジネスサポートに取り組み、米国共和党保守派と深い関係を有することからTokyo Tea Partyを創設。全米の保守派指導者が集うFREEPACにおいて日本人初の来賓となった。主な著作は『日本人の知らないトランプ再選のシナリオ』(産学社)、『トランプの黒幕 日本人が知らない共和党保守派の正体』(祥伝社)、『なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか』(すばる舎)、『メディアが絶対に知らない2020年の米国と日本』(PHP新書)、『2020年大統領選挙後の世界と日本 ”トランプorバイデン”アメリカの選択』(すばる舎)

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