コラム

バイデン大統領就任式で融和を訴えた22歳の女性詩人アマンダ・ゴーマン

2021年01月21日(木)17時00分

就任式で詩を朗読したアマンダ・ゴーマン Patrick Semansky/POOL/REUTERS

<「互いを受け入れるために武器を捨てよう」と新政権下での融和を呼び掛けた>

2021年1月20日に首都ワシントンの議会議事堂前で行われたジョー・バイデンの大統領就任式は、多くの面でこれまでとは異なるものだった。

2020年に始まった新型コロナウイルスのパンデミックのせいだけではない。証拠を提出できないのに不正選挙を訴えて敗北を認めないトランプ大統領の扇動的な言動、その結果としてのトランプ支持者による1 月6日の議会議事堂乱入事件。その事件で明らかになった数々のテロ計画に対する厳戒態勢でナショナル・モールは閉鎖された。

これまでの大統領就任式では、式場になる議会議事堂西側正面からリンカーン記念館まで続くナショナル・モールは、集まった市民がぎっしりと埋めていた。だが、20日の就任式でテレビに映ったナショナル・モールは人影がなくひっそりとしていた。

選挙でたとえ激しく戦った相手であっても権力を平和的に移行するのがこれまでのアメリカ大統領の慣わしだった。ところが、トランプは最後まで敗北を認めず、次期大統領の就任式に欠席した。それも前代未聞だが、過去4年間忠実に仕えてきたマイク・ペンス副大統領が、トランプの退任式に欠席してバイデンの就任式に出席したのも異例だった。これは、議会議事堂乱入事件の直接の影響である。

ペンス副大統領と同様に最近までトランプを支持してきた共和党のマコネル上院多数党院内総務は19日の議会で議会議事堂に乱入した暴徒が「大統領やその他の影響力がある者の嘘によって煽られていた」と事件を誘発したのがトランプだと批判した。そして、20日のトランプの退任式には欠席した。ケビン・マッカーシー下院少数党院内総務も2人と同じく退任式を欠席した。

バイデンがスピーチで強調した「unity(結束)」

気の毒なのは、新たに就任したバイデン大統領とカマラ・ハリス副大統領だ。宣誓就任式に続く昼食の会や舞踏会は中止され、家族や友人たちと心ゆくまで楽しむ祝の場を奪われたのだから。しかし、就任式のバイデンとハリスはそれを気にしている様子はまったくなかった。レディー・ガガの国歌斉唱を楽しみ、式に参列したビル・クリントン元大統領夫妻、ジョージ・W・ブッシュ元大統領夫妻、バラク・オバマ元大統領夫妻らと、まるで同窓会のように笑顔でお喋りを取り交わしていた。そこからは「大統領」という特別な立場に付随する大きな責任を背負った者だけが分かち合える党派を越えた友情のようなものを感じる。そして、その特別なグループに入りそこねたのが第45代大統領のトランプだ。

ハリス新副大統領は満面の笑顔を浮かべていたが、バイデン新大統領の笑顔は控えめに見えた。それは、これから取り組まねばならぬ難問のことが心から離れないからだろう。就任当日にはパリ協定への復帰など17の大統領令に署名することが予定されている。

バイデンが特に重視しているのが分断しているアメリカをひとつにまとめることだ。彼のスピーチでも「unity(結束)」が強調されていた。

プロフィール

渡辺由佳里

Yukari Watanabe <Twitter Address https://twitter.com/YukariWatanabe
アメリカ・ボストン在住のエッセイスト、翻訳家。兵庫県生まれ。外資系企業勤務などを経て95年にアメリカに移住。2001年に小説『ノーティアーズ』(新潮社)で小説新潮長篇新人賞受賞。近著に『ベストセラーで読み解く現代アメリカ』(亜紀書房)、『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』(晶文社)などがある。翻訳には、レベッカ・ソルニット『それを、真の名で呼ぶならば』(岩波書店)、『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP社、日経ビジネス人文庫)、マリア・V スナイダー『毒見師イレーナ』(ハーパーコリンズ)がある。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

エリオット、LSEG株大量取得か 経営改善へ協議と

ビジネス

中国1月自動車販売19.5%減、約2年ぶり減少幅 

ワールド

米下院、トランプ関税への異議申し立て禁止規定を否決

ビジネス

深セン市政府、中国万科向けに116億ドルの救済策策
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トランプには追い風
  • 4
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 5
    崖が住居の目の前まで迫り、住宅が傾く...シチリア島…
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    変わる「JBIC」...2つの「欧州ファンド」で、日本の…
  • 8
    一体なぜ? 中国でハリー・ポッターの「あの悪役」が…
  • 9
    衆院選で吹き荒れた「サナエ旋風」を海外有識者たち…
  • 10
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 1
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 5
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 6
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 7
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 8
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 8
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 9
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 10
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story