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小説『ロリータ』のモデルとなった、実在した少女の悲劇
多くの男性が「ロリータ」を性的なファンタジーの対象として読んだ courtneyk/iStock.
<優れた文芸小説『ロリータ』によって、男性の性的ファンタジーである「大人の男を誘惑する少女」のイメージが浸透してしまった>
日本では、ウラジミール・ナボコフの小説『ロリータ』のことを知らない者はいないだろう。30代後半の大学教授のハンバート・ハンバートが12歳の少女ドローレス・ヘイズに欲情をいだき、彼女と一緒にいるためにドローレスの母親と結婚する。
だが、ドローレスが夏のキャンプに行っている間に母親が事故死し、ハンバートはそれを機にドローレスを連れて車での旅に出る。ハンバートは12歳のドローレスを「ロリータ」という愛称で呼び、見知らぬ者には実父を装いながらもロリータと性的な関係を持つ。
『ロリータ』は1953年に完成したが、アメリカの大手出版社はいずれも出版を拒否した。そこでナボコフは、出版を快諾した(ややいかがわしいことで知られる)フランスのオリンピア社から1955年に初版を出した。それが話題になり、1958年にようやくアメリカで出版されたという逸話がある。
少女や幼女を性愛の対象にする心理である「ロリコン」という日本独自の表現は、もともとはナボコフの『ロリータ』と後に出版されたノンフィクション『ロリータ・コンプレックス』から来ている。
『ロリータ』はフィクションだが、ナボコフにインスピレーションを与えた実際の事件があったという。ベテランの犯罪ノンフィクション作家であるサラ・ワインマンの新刊『The Real Lolita(実存のロリータ)』によると、ナボコフはこの事件から相当多くのインスピレーションを受けていると考えられる。
1948年、50代のフランク・ラ=サールが、FBIの捜査員を装ってニュージャージー州で11歳の少女サリー・ホーナーを誘拐した。ラ=サールは少女を連れて車でアメリカ中を逃亡し、サリーが自分で逃亡するまでの2年間レイプし続けた。13歳で救助されたサリーだが、15歳の若さで車の事故で死亡した。
ナボコフはこの事件との関連を1977年に否定したようだが、類似点は多い。
ドローレス(ドリー)とサリーの年齢はほぼ同じで、母親はどちらも未亡人のシングルマザーだ。そして、ハンバートとラ=サールのどちらも車で逃亡の旅を続け、旅先では父と娘を装っていた。どちらも「(自分の言うことをきかないと)少年院に行くことになる」という脅しで少女を心理操作した。
『ロリータ』の中にも、「私がドリーに対してやったことは、1948年に50歳の修理工のフランク・ラ=サールが11歳のサリー・ホーナーにやったことではないか。たぶん」という文章が出てくるので、ナボコフが事件をよく知っていたのは明らかだ。
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