コラム

カトリック教会をよみがえらせた法王フランシスコの慈悲

2016年04月04日(月)16時30分

 フランシスコにこういった考え方を植えつけたひとりが、彼が17歳のときにブエノスアイレスで出会ったCarlos Duarte Ibarra神父だ。白血病で治療中のIbarra神父に告解をしているときに、「神の慈悲から歓迎されているのを感じた」と、フランシスコは語っている。

 このエピソードを読むと、私たちの振る舞いの重要さがさらに身にしみてくる。

 挫折や失敗をした人に石を投げつけるのか、余計な批判をせずに受け入れて話を聞くのか、という私たち大人の選択が、子どもたち、若者、そして社会全体に影響を与えるのだ。それに、より良い人生を生きるためには、自分のことを棚に上げて他人に石を投げるのを楽しむより、自分とは相容れない人の過ちすら「慈悲」の気持ちで受け入れ、寛容さがある世界を作ることに専念したほうがいい。

 本書は繰り返しも多いし、まとまりもない。そもそもが、キリスト教徒に向けてのメッセージだ。しかし、そのメッセージから「神」という単語さえ取れば、私のように宗教を持たない者を含め、世界のどこで生きる人にも通じる内容になっている。

プロフィール

渡辺由佳里

Yukari Watanabe <Twitter Address https://twitter.com/YukariWatanabe
アメリカ・ボストン在住のエッセイスト、翻訳家。兵庫県生まれ。外資系企業勤務などを経て95年にアメリカに移住。2001年に小説『ノーティアーズ』(新潮社)で小説新潮長篇新人賞受賞。近著に『ベストセラーで読み解く現代アメリカ』(亜紀書房)、『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』(晶文社)などがある。翻訳には、レベッカ・ソルニット『それを、真の名で呼ぶならば』(岩波書店)、『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP社、日経ビジネス人文庫)、マリア・V スナイダー『毒見師イレーナ』(ハーパーコリンズ)がある。

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