コラム

イスラム国(ISIS)再生の条件――アサド後シリアに広がる混乱の連鎖

2025年10月06日(月)14時04分


 
この撤退は深刻なリスクを伴う。SDFは最近、政府軍との統合合意に達したが、人員不足と装備の貧弱さが課題だ。米軍が数百人規模で残留し、継続的な支援を提供しない限り、シリア軍の対ISIS能力は低下する恐れがある。

撤退の背景には、米国内の疲弊感がある。長期駐留のコストと成果のバランスが問われているが、早計な撤退はISISの活動活発化を招くとの懸念が根強い。

将来の見通しと提言


ISISの再生は、シリアの安定化プロセスを脅かす最大の要因だ。ISISは領土支配を諦め、ゲリラ型テロにシフトしているが、混乱が続けば再び勢力を拡大する余地がある。2025年の攻撃増加は、その兆候だ。新政権が少数民族の包摂と治安強化に成功すれば、ISISの支持基盤を削ぐことができるが、外部要因が鍵を握る。

米国は撤退計画を見直し、少なくとも2026年以降も数百人の部隊を維持する必要があろう。

また、ISISの再生を阻止するためには、軍事力だけでなく、経済再建と社会統合が必要だ。シリアの復興支援を国際社会が連携し、貧困や失業への対策を強化し、若者がテロの世界に入ることを防止する必要がある。

ISISの脅威はグローバルな問題であり、それへの対策を怠れば、欧米へのテロが再燃するリスクがある。シリアの未来は、国際的なコミットメントにかかっている。

プロフィール

和田 大樹

株式会社Strategic Intelligence代表取締役社長CEO、清和大学講師(非常勤)。専門分野は国際安全保障論、国際テロリズム論など。大学研究者として国際安全保障的な視点からの研究・教育に従事する傍ら、実務家として海外進出企業向けに政治リスクのコンサルティング業務に従事。

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