コラム

中国人と台湾人は、友人になれる

2022年09月01日(木)10時55分
周 来友(しゅう・らいゆう)
ナンシー・ペロシ

台湾訪問後、日本を訪れて記者会見を開いたナンシー・ペロシ米下院議長 ISSEI KATO-REUTERS

<台湾有事が取り沙汰されるなか、中国人と台湾人は仲良くなれるの?と疑問に思っている人がいるかもしれない。私の体験をお伝えしよう>

米中関係が悪化している。

ナンシー・ペロシ米下院議長の台湾訪問に中国が猛反発、大規模な軍事演習にまで発展した。その様子は日本でも報じられ、「台湾有事は日本有事」と危機感をあらわにする専門家もいた。

ペロシ議長は日本も訪れ、記者会見ではアジア歴訪の意義を威勢よく語った(写真)。

ただ、当の台湾人の反応を知ったら日本人は拍子抜けするかもしれない。ある台湾の世論調査では6割超が中台の軍事衝突は「心配していない」と回答。私が台湾人の友人に聞いた範囲でも、冷静な意見がほとんどだ。

独立宣言さえしなければ中国は攻めてこない。一方、台湾を守ると言っているアメリカも自国の利益が最優先なので過信は禁物――といった具合に。

ところで、「台湾人の友人」と書いたが、不思議に思った人がいるかもしれない。中国人と台湾人が仲良くなれるの? そんな疑いの声が聞こえてきそうだ。

「国と個人は別」そう頭では分かっていても、なかなか切り離して考えられないのが人の常である。実際、日本人の大半は中国人と台湾人がどう付き合っているのかを知らないのではないか。

せっかくの機会でもあるし、私の体験を紹介してみたい。

私が初めて台湾人に会ったのは80年代後半、東京に来てからだ。アルバイト先で台湾人2人と友人になった。

1人は日本語学校の先輩で、もう1人は明治大学の留学生。当時は台湾人のほうが経済的に恵まれており、着ている服のセンスも違った。そう言えば、缶ジュース1本買うのにも悩む私たち貧乏中国人に、台湾人のクラスメイトがよくランチをおごってくれたっけ。

日本留学の歴史も長い台湾人が「先輩」で、中国人より立場は上だったが、良好な関係だった。実際、私は台湾人の友人たちと国内旅行をしたり、商売の話や、時に政治体制の話でも熱く議論を交わした。

ただ、統一とか独立といった話をしたことはない。そういう時代ではなかった。

今は立場が逆転し、中国人のほうが裕福になった。

しかも若者は以前より愛国的になっている。中国との統一で実利が得られるなら台湾人は親中になるはず。そんな政府寄りの考えを持つ中国人も少なくない。

2022年の日本で、友人になった中国と台湾の若者はどこまで率直に政治の話をしているだろう――。

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ロシア海軍副司令官が死亡、クルスク州でウクライナの

ワールド

インドネシア中銀、追加利下げ実施へ 景気支援=総裁

ビジネス

午前の日経平均は小幅続伸、米株高でも上値追い限定 

ビジネス

テスラ、6月の英販売台数は前年比12%増=調査
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 6
    ワニに襲われた直後の「現場映像」に緊張走る...捜索…
  • 7
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 8
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 9
    吉野家がぶちあげた「ラーメンで世界一」は茨の道だ…
  • 10
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 3
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 4
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギ…
  • 5
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 6
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 10
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 7
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 8
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 9
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 10
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story