コラム

なぜ日本はオウム裁判を録画しなかった? フランス人が感じる不思議

2021年09月22日(水)11時42分
西村カリン

テロ事件の裁判ではフランスと同じような仕組みが可能なのか。そのことに気付いたのは私だけではない。『「オウム真理教」裁判傍聴記』を記したジャーナリストの江川紹子さんは、今回のフランスの公判と絡めてこうツイートした。

「オウムの麻原公判が始まる前、審理の録画を裁判所に求めるよう、記者クラブに働きかけたが、関心を持ってもらえなかった」「関係者が多いので、仮設の大規模法廷を用意する、というのも、日本の裁判所には思いつかない発想では? 体に合う服を用意するのではなく、『服に体を合わせろ』が日本流」

オウム真理教の教祖、麻原彰晃(松本智津夫)の1996年4月の初公判で傍聴を希望した人は、何と1万2292人。抽選で傍聴券を得たのは48人だけ。公判の「公」の意味が軽視されたと言っていい。

これほど重要な公判でも一般的な事件の裁判と傍聴席数が同じで、明らかにその歴史的な重要性が認識されていない。オウムの公判については江川さんらの傍聴記があるが、当時の記事や本を読んでも分からないことは多い。

話す被告人や証人の表情を傍聴席から見ないと、一部の重要な情報を把握できない。研究や歴史のために映像を残すことが必要だったのではないか。

magTokyoEye_Nishimura.jpg西村カリン
KARYN NISHIMURA
1970年フランス生まれ。パリ第8大学で学び、ラジオ局などを経て1997年に来日。AFP通信東京特派員となり、現在はフリージャーナリストとして活動。著書に『不便でも気にしないフランス人、便利なのに不安な日本人』など。

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