なぜ日本はオウム裁判を録画しなかった? フランス人が感じる不思議
テロ事件の裁判ではフランスと同じような仕組みが可能なのか。そのことに気付いたのは私だけではない。『「オウム真理教」裁判傍聴記』を記したジャーナリストの江川紹子さんは、今回のフランスの公判と絡めてこうツイートした。
「オウムの麻原公判が始まる前、審理の録画を裁判所に求めるよう、記者クラブに働きかけたが、関心を持ってもらえなかった」「関係者が多いので、仮設の大規模法廷を用意する、というのも、日本の裁判所には思いつかない発想では? 体に合う服を用意するのではなく、『服に体を合わせろ』が日本流」
オウム真理教の教祖、麻原彰晃(松本智津夫)の1996年4月の初公判で傍聴を希望した人は、何と1万2292人。抽選で傍聴券を得たのは48人だけ。公判の「公」の意味が軽視されたと言っていい。
これほど重要な公判でも一般的な事件の裁判と傍聴席数が同じで、明らかにその歴史的な重要性が認識されていない。オウムの公判については江川さんらの傍聴記があるが、当時の記事や本を読んでも分からないことは多い。
話す被告人や証人の表情を傍聴席から見ないと、一部の重要な情報を把握できない。研究や歴史のために映像を残すことが必要だったのではないか。
西村カリン
KARYN NISHIMURA
1970年フランス生まれ。パリ第8大学で学び、ラジオ局などを経て1997年に来日。AFP通信東京特派員となり、現在はフリージャーナリストとして活動。著書に『不便でも気にしないフランス人、便利なのに不安な日本人』など。
アマゾンに飛びます
2025年12月9日号(12月2日発売)は「日本時代劇の挑戦」特集。『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』 ……世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』/岡田准一 ロングインタビュー
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら
死刑は「やむを得ない」と言う人は、おそらく本当の意味を考えていない 2025.12.06
高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい 2025.12.03
文化の「魔改造」が得意な日本人は、外国人問題を乗り越えられる 2025.11.13
外国人投資家の不動産爆買いに迷惑しているのは日本人だけではない 2025.10.23
報じられなかった中国人の「美談」 2025.10.22
ニッポン停滞の証か...トヨタの賭ける「未来」が関心呼ばない訳 2025.10.17
日本人のスマホ依存症を減らすには、国や自治体が介入して規制すべき? 2025.10.08






