【公共放送】NHKとは「決定的な違い」が...トランプ演説「改ざん」疑惑で揺れるBBCに「足りないもの」とは?
The BBC’s Trust Issue
ロンドンのBBC本部 TAYFUN SALCIーZUMA PRESS WIREーREUTERS
<トップ辞任では終わらない。目を向けるべきは、イギリス政治の構造変化と、「公共放送は誰のものか」という正統性の問題だ>
英公共放送BBCが11月9日、ティム・デイビー会長とニュース部門のデボラ・ターネスCEO(最高経営責任者)の辞任を発表した。政治的偏向だとの非難を受けての決定だ。
なかでも問題視されたのは、調査報道番組『パノラマ』が、2021年1月に起きた米連邦議会議事堂襲撃事件に関して、ドナルド・トランプ米大統領の演説を編集したという指摘だ(トランプも「改ざん」されたと批判している)。

トップ2人の辞任はBBCの長い歴史のうち最新で、最も劇的な出来事だ。上層部のアカウンタビリティー(説明責任)を問う動きに見えなくもないが、今回の一件は信頼性低下にさらされるBBCの長年の問題の証しでもある。
懸念すべき状況はデータに表れている。問題はBBCの行動だけでなく、分断化する視聴者が抱くイメージだ。
BBCへの信頼度は、政治的アイデンティティーが大きく左右する。筆者らは22年12月~24年6月、英国内の1万1170人を対象に調査を実施。BBCに対する見方は、支持政党の違いによって著しく異なることが判明した。
調査では、19年の英総選挙での投票先を回答者に尋ねた。その結果、BBC信頼度(7段階評価)が最も高かったのは、リベラル派の自由民主党候補に投票した層で、平均値は4.54だった。
労働党支持層は3.88で、保守党支持層は3.17。注目すべきことに、ブレグジット党(20年に「リフォームUK」に改称)支持層では2.16にとどまった。
右派のリフォームUKは最近の選挙で躍進している。BBCに最も距離を感じている層が、今や政治的に最も台頭しているということだ。
そのせいで、正統性をめぐる深刻な課題が生まれている。BBCが信頼を失っている層こそが、BBCを取り巻く政治的環境を形づくる傾向が強まっているからだ。
対照的なNHKの立場
トップ辞任という形で危機が勃発した一因はそこにある。BBC不信と結び付いた政治潮流はもはや周縁的ではなく、英政治の中心に位置している。
筆者らの調査では日英の比較も行った。イギリスと異なり、日本の公共放送の場合は党派的亀裂は見られない。保守派とリベラル派のNHKへの信頼感はおおむね同程度だ。
日英の差異は政治文化の違いを示している。NHKは今も、組織的な継続性から来る中立性のオーラを帯びているが、BBCはより広範な文化戦争の象徴的な戦場と化している。
イギリスのメディア環境はよりあからさまに敵対的で、今やジャーナリズムの質ではなく党派的アイデンティティーが偏向性の指標だ。
問われているのは、狭義の「偏向」や「公平性」ではない。複数の政治的世界観の中で、正統性を確保できるかだ。
トップ辞任で問題が解消されたと考えてはならない。今回の出来事は、BBCの課題は運営管理にあるだけでなく、政治的かつ文化的なものであることを浮き彫りにしている。
BBCはどんな人が、どんな理由で、どのようにBBCを受け止めているかに向き合う必要がある。さもなければ、BBCを特別な存在にしてきたもの自体を失うことになりかねない。すなわち、大きく分断化した社会で、広く共有される公共放送という役割だ。
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Steven David Pickering, Honorary Professor, International Relations, Brunel University of London
This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.
Pickering, Steven David, Sunahara, Yosuke, and Hansen, Martin. Examining trust in public service news providers: A comparison of the BBC and NHK. Communications, 2025. DOI: 10.1515/commun-2024-0184
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