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ドローンが戦争の常識を覆す...ウクライナ戦争に見る「非接触型戦争」の最前線とその実態

SWARM UND DRANG

2025年10月1日(水)19時15分
ヤシル・アタラン(戦略国際問題研究所〔CSIS〕研究員)

ドローン「シャヘド」

ロシア軍が大量に発射しているドローン「シャヘド」 SCOTT PETERSON/GETTY IMAGES

これらの数字が示すのは戦略の進化だ。ロシアはウクライナの迎撃能力を上回る集中攻撃で都市部に打撃を与え、降伏に追い込もうとしている。戦車による徹底攻撃や精密攻撃ではなく、安価な兵器を大量に使った長期の消耗戦で最終的に勝利を収めようという狙いだ。

ロシアの低コスト戦略の要は、ドローン生産の量産性にある。シャヘドは当初イランで設計され、ウクライナ侵攻直後は輸入されていた。だが、現在は中部タタールスタン共和国のエラブガや、同じく中部のウドムルト共和国イジェフスクの兵器メーカーIEMZクポルなど、国内のいくつもの拠点で生産されている。


ドローンの生産を維持するため、ロシアは世界中のサプライチェーンを利用して西側の電子機器を密輸しているとされる。報道によればこの数カ月、特にIEMZクポルで製造を拡大し、イラン製シャヘド238をモデルにした最新鋭のゲラニ3などの開発が進められている。

ゲラニ3の航続距離は推定で最大2500キロ。先日のようにポーランド領空を侵犯するだけでなく、さらに西への攻撃も可能になるかもしれない。今やロシアはバルト3国や中欧の一部も射程に収め、複数の国に同時にドローンを飛ばす能力もある。

迎撃に費用をかけられない

西側諸国の課題は、これらのドローンを迎撃できるかどうかではない。持続可能なコストで迎撃できるかどうかだ。

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