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太平洋戦争

米軍が長崎への原爆投下を急いだ理由と、幻の「飢餓作戦」「本土決戦」を在日米国人学者が探る

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2025年8月20日(水)15時45分
M・G・シェフタル(静岡大学教授)

アメリカには2発目の原爆投下を急ぐ理由があった。広島への原爆投下の心理的なショックが収まらないうちに追撃をかければ、その効果を最大化できる。こうした戦略的な狙いがあったからだ。

間髪入れずに2発目の原爆を投下すれば、日本側はアメリカがこうした兵器を(実際以上に)多数保有していると思い込み、今後も原爆投下が続くという恐怖感を抱く。そうなれば日本は、すぐに降伏するか(ハリー・トルーマン米大統領が7月26日のポツダム宣言で威嚇したとおり)壊滅するまで戦うかの二者択一を迫られる。そういう読みだ。


日本政府の指導部および国民への政治的・心理的圧力を高めるため、第20空軍所属のB29は広島への原爆投下以降、焼夷弾を落とす合間に日本各地の都市上空からビラをまいていた。これには広島上空のキノコ雲の写真と、次も「人類が作り上げた最も破壊的な爆弾」を使用するとの警告が日本語で記されていた。

「一億火の玉」真意を懸念

ビラには次のように書かれていた。「我等は今や日本々土に対してこの武器を使用し始めた。もし諸君が尚疑があるならばこの原子爆弾が唯一箇広島に投下された際いかなる状態を惹起したか調べて御覧なさい。この無益な戦争を長引かせている軍事上のあらゆる原動力をこの爆弾を以て破壊する前に我等は諸君がこの戦争を止めるよう陛下に請願することを望む。......諸君は直ちに武力抵抗を中止すべく措置を講ぜねばならぬ。然らざれば我等は断乎この爆弾並びにその他あらゆる優秀なる武器を使用し戦争を迅速かつ強力に終結せしめるであろう。即刻都市より退避せよ」(一部、かな表記に改め)

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