最新記事
太平洋戦争

米軍が長崎への原爆投下を急いだ理由と、幻の「飢餓作戦」「本土決戦」を在日米国人学者が探る

ATOMIC ENDGAME

2025年8月20日(水)15時45分
M・G・シェフタル(静岡大学教授)

newsweekjp20250820043701.jpg

米軍が長崎に投下した原爆「ファットマン」 BRIDGEMAN IMAGESーREUTERS

スターリンの軍隊から約4000キロ南東、エノラ・ゲイの駐機場から100メートルほど離れたところでは、原爆を開発するマンハッタン計画の「プロジェクト・アルバータ」に所属する科学者や技術者たちが冷房完備の専用組み立て小屋で働いていた。

彼らが徹夜で取り組んでいたのは2回目の原子爆弾投下の準備だった。それはわずか3週間前にニューメキシコの砂漠で地上試験を終えたばかりの新型プルトニウム爆弾で、その丸々とした形から「ファットマン」と呼ばれていた。


米軍はテニアン島から再びB29を飛ばし、24時間以内に2発目の原爆を日本の都市(長崎市か福岡県の小倉)に落とす計画だった。

広島に投下されたのは何度も実験を重ねた、技術的にもはるかに単純なウラン爆弾だった。実際、それは予定どおりに爆発した。

だが広島に投下した原爆よりはるかに複雑で、仕組みとしても繊細な「ファットマン」型の原爆が設計どおりに作動するかどうか。プロジェクト・アルバータのメンバーは誰一人として確信を持てずにいた。

技術者たちは時間との闘いも強いられていた。2発目の原爆投下は、西日本の標的地域上空に晴れ間が出ている最後のチャンスを利用するよう調整が進められていた。8月9日は空爆に適した好天が予想されていた。このタイミングを逃せば、天候の回復を待ち、2発目の原爆を目視で投下可能な次の機会が訪れるまでに1週間近くかかる。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、クックFRB理事の辞任要求 住宅ローン

ワールド

ロ外相、米欧の安全保障議論けん制 ウクライナ巡り直

ビジネス

訂正(発表者側の申し出)-〔アングル〕ドル高に不足

ビジネス

ノボノルディスク、不可欠でない職種で採用凍結 競争
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家のプールを占拠する「巨大な黒いシルエット」にネット戦慄
  • 2
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 3
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自然に近い」と開発企業
  • 4
    夏の終わりに襲い掛かる「8月病」...心理学のプロが…
  • 5
    広大な駐車場が一面、墓場に...ヨーロッパの山火事、…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    習近平「失脚説」は本当なのか?──「2つのテスト」で…
  • 8
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 9
    【クイズ】沖縄にも生息、人を襲うことも...「最恐の…
  • 10
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 3
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 4
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 5
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 6
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 7
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 8
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 9
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 10
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中