最新記事
水資源

中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や流域住民への影響は?下流国との外交問題必至

Satellite Photos Show Where China Is Building World's Biggest Hydro Dam

2025年7月24日(木)18時25分
マイカ・マッカートニー

メクトダム1つでイギリスの電力量が賄える?

インド・ニューデリーにある政策研究センターの戦略研究教授ブラーマ・チェラニーは、「中国の超大型ダムは、ヒマラヤから流れ下る栄養豊富な堆積物によるブラマプトラ川の自然な流れを妨げることになる。これは、同河川の生態系にとって大きな問題だ」とXに投稿した。

「超大型ダムはブラマプトラ川での漁業を支え、土壌回復に寄与してきた自然な氾濫サイクルをも破壊する。季節ごとの沈泥(粒径が砂よりも細かく、粘土よりも粗い土。シルト)の供給がなければ、アッサム州およびバングラデシュは、肥沃な天然土壌を失うことになる」


しかし、中国側は上述のような下流域の国々の懸念に反論。 中国外交部の郭家坤も、23日の記者会見で、「メトクダムが完成すれば、ヤルンツァンポ川全域での防災や減災に寄与するだろう。下流地域に悪影響を及ぼすことはない。中国は下流諸国と水循環データの共有、洪水防止、減災といった分野で協力しており、メトクダムプロジェクトについても必要な意思疎通を行っている。今後も河川流域のすべての人々の利益のため、協力を強化していく」と発言している。

メトクダムは、五つの水力発電所で構成され、2030年代に稼働開始予定だ。メトクダムが稼働すれば、三峡ダムを超える規模の発電量が実現するだろう。

このプロジェクトは、新たに設立された国有企業の中国雅江集団有限公司によって運営され、年間3000億キロワット時(kwh)の再生可能電力を生産することを目指している。これは、昨年のイギリス全体の電力消費量に匹敵する。

チベットにはヤルンツァンポ川の他、多くの国際河川の水源が存在している。中国による一方的な河川開発は、新たな国際問題の火種になる可能性もあるのだ。

ニューズウィーク日本版 豪ワーホリ残酷物語
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年9月9日号(9月2日発売)は「豪ワーホリ残酷物語」特集。円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代――オーストラリアで搾取される若者のリアル

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:金正恩氏の娘ジュエ氏、訪中同行で国際デビ

ワールド

ロシア、ウクライナに大規模空爆 ポーランドがスクラ

ワールド

ロ朝首脳会談始まる、北朝鮮のロシア派兵にプーチン大

ワールド

台湾総統、強権的な指導者崇拝を批判 中国軍事パレー
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 2
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 3
    「見せびらかし...」ベッカム長男夫妻、家族とのヨットバカンスに不参加も「価格5倍」の豪華ヨットで2日後同じ寄港地に
  • 4
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 5
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
  • 6
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 7
    Z世代の幸福度は、実はとても低い...国際研究が彼ら…
  • 8
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 9
    トレーニング継続率は7倍に...運動を「サボりたい」…
  • 10
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 4
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 5
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 6
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 7
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 8
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 9
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中