約束だけのロシア、結果を出す中国...キューバが「中国依存」を強める背景とは?
23年5月、ロシアのチェルニシェンコ副首相がキューバを訪問し、同国最大の製鉄所の再開記念式典に出席した。キューバ国営メディアは、このプロジェクトがロシアの1億ドルの資金提供によって実現したと報じ、チェルニシェンコ氏は製鉄所の再開を「ロシアとキューバの協力の好例」と評した。
同製鉄所のレイニエル・ギジェン所長は、2024年に鉄筋の生産量が6万2000トンに急増すると表明したが、キューバ統計機関ONEIが4月に発表した報告書によると、同年の鉄筋生産量はわずか4200トンにとどまっている。ロシアの資金は、生産に結びつかなかった。
ある平日の朝に製鉄所を訪れたが稼働している様子はなく、煙突も停止していた。地元住民のエスペランサ・ペレスさん(37)によると、工場はこの数カ月、稼働していないという。
「製鉄所が動いていれば音が聞こえるし、労働者も見える。でも稼働していることを示すものは何もない。言葉ばかりで、なんの利益もなかったよ」と、ぺレスさんは話した。
キューバ政府は、生産量の差異に関するコメント要請に応じていない。ただ、燃料と発電の不足はキューバ全土の産業に影響を及ぼし、生産停滞の一因となっている。
ロイターが入手した文書によると、製鉄所の開所式の翌日、チェルニシェンコ副首相はディアスカネル大統領と共に、キューバ政府機関とロシア国営企業および民間企業との間の少なくとも8つの協定に署名した。これらの広範囲にわたる合意には、キューバへのパン製造用小麦供給保証、ハバナでのロシア系商業施設の開設、首都の歴史的建造物の修復、人工知能分野での協力、そしてハバナ近郊のビーチ沿いのかつての歴史的高級住宅地タララの再建などが含まれていた。
しかし、最近の現地取材によると、タララの住宅のほとんどは放棄されているか荒廃しており、ロシアの投資が入っている様子は見られなかった。タララのマリーナ施設にはボートが1隻ドックに繋がれているだけで、港の入り口は堆積物で塞がれて水がよどんでいた。
また、当初は大きな期待が寄せられた商業施設の開設も2年延期されており、近隣の百貨店ユムリの改装計画も停滞している模様だ。ハバナの歴史的なビエハ広場にある19世紀の建造物サント・アンヘルをロシアが修復するという合意も進捗が止まっているようだ。