最新記事
荒川河畔の「原住民」(32)

中国人ジャーナリストが日本のホームレスを3年間取材して知った10の命題

2025年6月20日(金)20時05分
文・写真:趙海成

ホームレスの生き方は日本社会の象徴でもある

■命題6:刑務所出所者にとっての新たな生き方

服役を終えた受刑者の中には、家族や親戚と縁を切られ、帰る場所を持たない人も多い。

出所後の行き場がない彼らにとって、ホームレス生活は、最低限の収入を得ながら生き延びる現実的な道となる。

■命題7:社会的弱者の一時的な避難場所

学歴やスキルが乏しく、あるいは身体的・精神的障害を抱え、いじめや差別に苦しむ人々にとっても、ホームレスは一時的な生存空間を提供している。

彼らはホームレス状態に置かれることで社会的な注目を集めやすくなり、行政の支援や福祉サービスにつながる可能性も生まれる。

■命題8:自立的で文化的な一面もある

日本のホームレスは、多くの長所も持っている。

物乞いに頼らず、自ら働いて収入を得る日本の伝統的な勤労意識が根付いている人が多い。

さらに、私が出会ったほとんどのホームレスは毎日ラジオでニュースを聞き、図書館に通って読書や新聞、雑誌を読むなど、文化的な営みも欠かしていない。

■命題9:民主・自由・人権の象徴としての存在

ホームレスの存在は、日本という国の民主、自由、ひいては人権尊重の最も有力な証明である。

日本では国民が誰でも自由にライフスタイルを選ぶことができる。たとえ彼らの住む小屋が公共の土地を使う違法行為だとしても、警察が乱暴な手段で取り締まることはない。

ホームレスになった人にも、国の生活保護を申請する権利がある。日本国憲法に「基本的人権の尊重」の原則があるからである。

■命題10:私自身の気づき

最後に、これは私個人の実感に過ぎないが、ホームレスの人々と接することで、自分の中の不満や欲望がずいぶんと減ったことに気づかされた。

例えば、家が狭く古いと感じたり、冬の寒さや夏の暑さに文句を言いそうになったとき、路上で生活している人々の境遇を思い浮かべると、今の自分の暮らしははるかに恵まれているのだと素直に思えるのである。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イランとイスラエル、再び互いを攻撃 米との対話不透

ワールド

米が防衛費3.5%要求、日本は2プラス2会合見送り

ビジネス

トヨタが米国で値上げ、7月から平均3万円超 関税の

ワールド

トランプ大統領、ハーバード大との和解示唆 来週中に
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 2
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 3
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「過剰な20万トン」でコメの値段はこう変わる
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    全ての生物は「光」を放っていることが判明...死ねば…
  • 6
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 7
    「巨大キノコ雲」が空を覆う瞬間...レウォトビ火山の…
  • 8
    【クイズ】次のうち、中国の資金援助を受けていない…
  • 9
    マスクが「時代遅れ」と呼んだ有人戦闘機F-35は、イ…
  • 10
    イランとイスラエルの戦争、米国より中国の「ダメー…
  • 1
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 2
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 7
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 8
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?.…
  • 9
    イタリアにある欧州最大の活火山が10年ぶりの大噴火.…
  • 10
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 7
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 10
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中