キーウが燃えている...飛来するドローン、避難先の人々、終わりなき恐怖...戦争と人々のリアルとは
Another Bad Night in Kyiv

ロシアから飛来したドローンによる一斉攻撃を受け、ウクライナの首都キーウの空はオレンジ色に染まった OLES KROMPLIASーGLOBAL IMAGES UKRAINE/GETTY IMAGES
<6月10日にキーウで行われた大空襲を経験したジョージア出身の女性ジャーナリストは、避難先の人々との交流を通じて、何を思ったのか。迫真の現地ルポ>
6月10日の午前0時すぎ、キーウ市内でいつもの夜間外出禁止が始まった途端、携帯電話にミサイルやドローンの襲来を告げる警報が届いた。そのとき私はバルコニーでたばこを吸っていた。見上げると、何か巨大な星のようなものが夜空に消えた。
妙に落ち着いていた私は、たばこを灰皿に落としてから部屋に戻った。難しい選択が待っていた。両側を壁で守られた廊下に出るか、このまま自室にとどまるか。私と友人のイリーナは少し待った。ひどく疲れていたからベッドを離れたくない──たとえミサイルが飛んできても。そう思っていたら立て続けに爆発音がした。仕方ない、2人で廊下へ避難した。
「私が今これを書いている間も高度に文明化された人間どもが頭上を飛び交い、私を殺そうとしている」。小説家ジョージ・オーウェルが第2次大戦におけるロンドン大空襲の晩に記した文章だが、キーウの夜は連日そんな調子だ。
違うのは、殺しに来るのが遠隔操作の無人機だという点。大量生産の安価なドローンが次から次へとキーウに飛来して市民を襲う。それにしても、この夜はひどかった。
私は市内のソロミアンスキー地区にある旧ソ連時代の集合住宅に滞在していた。爆発でアパートが揺れ、70代の女性がナイトガウン姿で廊下に飛び出してきて泣き叫んだ。心臓発作を起こさないかと、ちょっと心配になった。