中国が支配する「闇の漁業ネットワーク」...他国のEEZ内で地元漁師を苦しめる違法操業の実態とは
China Dominates 'Dark' Network Behind Global Fishing Crisis
違法操業に市民は怒り
闇の漁業ネットワークを支える者は海上だけにいるわけではない。陸上にも、闇の漁業ネットワークを支える2つの重要な存在があるのだ。
まず、港湾代理人。港での手続きや運航情報の伝達などを担うが、同時に、監視の目をすり抜ける手段にもなり得ると報告書は警鐘を鳴らす。
次に、保険会社。IUU漁業や労働問題に関与した経歴のある船舶に対しても保険を提供することで、違法性の高い操業を経済的に支えている。皮肉なことに、保険請求の記録の方が、船舶の位置情報システムよりも乗組員の動向や健康状態を把握しやすいケースもあるという。
中国などから来た違法操業漁船に対して、南米の漁師たちも黙って見ているわけではない。
C4ADSの天然資源安全保障アナリスト、サラ・ニックスは本誌に対し、「遠洋イカ漁船は、港湾代理人からタンカーまで、世界的なネットワークに依存している。このようなネットワークのおかげで、ほとんど制限を受けることなく、違法操業を続けることができている」と指摘している。
その上で、イカが食料安全保障や地域経済にとって不可欠となっているペルーやアルゼンチンといった国々で、草の根の圧力が高まっていることに触れた。
「エルニーニョのような気候変動、乱獲、あるいはIUU活動によるものかを問わず、イカの水揚げ量が減少する中で、地元の漁師や市民団体の間では不満が高まっている。彼らは外国船舶だけでなく、そうした船が自由に活動できる不透明なシステムそのものへの厳しい監視を求めている」
洋上積み替えや便宜置籍船といった制度の隙を突いてくる「闇の漁業ネットワーク」を、もはや一国で取り締まることは難しい。現地社会による反発を受け、国際的な規制の見直しを通じた漁業ガバナンスの再構築が求められているのかもしれない。

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