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荒川河畔の「原住民」(30)

かつて「ドヤ街」だった山谷で開かれた野外音楽フェスで見たもの

2025年6月3日(火)16時15分
文・写真:趙海成

屋台の1つを営む在日ベトナム人による支援団体では、無償で1000食以上の揚げ春巻きとベトナムコーヒーが用意されていた。参加者は音楽を聴きながら美味しそうに頬張っていた。

また、美味しそうなパン屋もあった。「夜のパン屋さん」といって、都内各所のパン屋から、廃棄になってしまう可能性のあるパンを集荷して夜に販売し、フードロス解消に貢献すると同時に、仕事がない人のために雇用の機会を作る活動をしている。

元々はNPO法人ビッグイシュー基金の共同代表をしていた料理研究家の枝元なほみさんが、路上での雑誌販売のほかに新たな仕事を作るために始めた事業だそうだ。

屋台だけでなく、山谷の歴史を紹介するパネル展示や、山谷で活躍するアーティストの作品なども壁一面に飾られており、山谷の歴史と現在を知ることができた。

祭りのように賑やかな様子の「りんりんふぇす」は、普段は生活のために苦労している人たちが自由気ままに思いきり楽しむことができるだけではなく、このような支え合いの活動が集まる場でもあった。

舞台に出て歌ったり、仲間同士でお互いに大声で励まし合ったりして、このイベントはまるで山谷の人々のカーニバルのようだ。

しかし、そんな山谷にも、暗い側面がある。

「ドヤ」に溢れた街には今、高齢者のための施設が

かつて労働者でいっぱいで、彼らのための格安旅館「ドヤ」に溢れた山谷の街は、1990年代から急激に変化した。バブル経済の崩壊とともにメインだった建設業の仕事が急激に減少し、2000年にはドヤを離れることを余儀なくされ、ホームレスになる人が急増した。

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