【歴史解説】核開発は当然「国家の権利」...米・イランの確執の原因「攻防の歴史」を振り返る

A Durable Nuclear Deal

2025年6月3日(火)16時17分
シーナ・アゾディ(米ジョージ・ワシントン大学講師)

アメリカは国王の機嫌を損じたくないから、イランに対する差別的な扱いを疑う国王の懸念を和らげようとした。

当時の米国務長官ヘンリー・キッシンジャーは75年11月、駐イラン米大使リチャード・ヘルムズに電報を送り、アメリカは「イランに対して特別に不利な扱いはしない」と伝えるよう指示している。


当時の米フォード政権は「拒否権」の要求を「厳格に保護された」プログラムと言い換えるなど、文言を和らげるような提案をしたが、イラン政府はこれも拒否した。

フォード政権下では結局、アメリカの要求にイランが強く反発したため、イランとの合意には至らなかった。

それでも77年2月、アメリカが核協力において他のパートナーと同等の待遇を受けられる「最恵国待遇」の地位を与える代わりに、イランは再処理に関する要求の規模を縮小することに同意した。

そして78年、ようやく原子炉売却の協定が結ばれた。しかし79年2月の王制打倒に至る政治的混乱(いわゆるイスラム革命)のため、実行に移されることはなかった。

その後もイランの核開発への野望は変わらなかった。政治路線が親米から反米・反帝国主義に転じただけだ。

王制時代の核開発を引き継いだイラン・イスラム共和国は当初、その計画をいったん停止し、縮小した。だが82年には核開発を再開し、最終的には前政権と同じ野望を追求することになった。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

緩和の出口戦略含め、財政配慮で曲げることはない=内

ワールド

習首席が米へのレアアース輸出に合意、トランプ大統領

ビジネス

アングル:中国製電子たばこに関税直撃、米国への輸入

ワールド

日米関税協議、「一致点見いだせていない」と赤沢氏 
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:韓国新大統領
特集:韓国新大統領
2025年6月10日号(6/ 3発売)

出直し大統領選を制する李在明。「政策なきポピュリスト」の多難な前途

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラドールに涙
  • 2
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット騒然の「食パン座り」
  • 3
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが、今どきの高齢女性の姿
  • 4
    ひとりで浴槽に...雷を怖れたハスキーが選んだ「安全…
  • 5
    脳内スイッチを入れる「ドーパミン習慣」とは?...「…
  • 6
    プールサイドで食事中の女性の背後...忍び寄る「恐ろ…
  • 7
    日本の女子を追い込む、自分は「太り過ぎ」という歪…
  • 8
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 9
    壁に「巨大な穴」が...ペットカメラが記録した「犯行…
  • 10
    救いがたいほど「時代錯誤」なロマンス映画...フロー…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシストの特徴...その見分け方とは?
  • 4
    ペットの居場所に服を置いたら「黄色い点々」がびっ…
  • 5
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット…
  • 6
    日本の女子を追い込む、自分は「太り過ぎ」という歪…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    ウクライナが「真珠湾攻撃」決行!ロシア国内に運び…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 7
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 8
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 9
    ペットの居場所に服を置いたら「黄色い点々」がびっ…
  • 10
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中