【歴史解説】核開発は当然「国家の権利」...米・イランの確執の原因「攻防の歴史」を振り返る

A Durable Nuclear Deal

2025年6月3日(火)16時17分
シーナ・アゾディ(米ジョージ・ワシントン大学講師)

多くの人々の予想に反して、イランは99年夏までにウラン濃縮の技術を習得し、以来、着実にその能力を伸ばしてきた。イランの核開発は、西側諸国から経済・貿易面での譲歩を引き出すための交渉の切り札でもあった。

相互の妥協が交渉に必要

イランに求めていることが実現不可能であることをアメリカが認識するまでには長い時間を要した。クリントン政権も、イランの核開発を断固として拒否した。当時の国務長官ウォーレン・クリストファーは95年5月に、「アメリカは(イランの)核開発計画全体を終わらせるべきだと考える」と断言している。


その後、ジョージ・W・ブッシュ大統領の下で安全保障問題担当補佐官を務めたコンドリーザ・ライスは、ウラン濃縮ゼロは譲れないとしつつも、アメリカはイランの核開発計画に譲歩せざるを得ないと認めた。

外交的解決策が見いだされたのは、バラク・オバマ大統領が、アメリカは濃縮ゼロを要求することはできないし、ましてや核開発の放棄を要求することなどできないと認識したときだった。

それでもアメリカには強硬派の論客が多く、イランの核開発計画の完全な解体、いわゆる「リビア・モデル」を求める声が根強くある。

イラン政府からすれば、このような条件への同意は無条件降伏に等しい。だからどうしてものめない。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

インド、パキスタン人3人を殺害 カシミール観光客襲

ビジネス

ドイツ銀、ECB利下げ予想を撤回 次の政策変更は利

ワールド

ガザの死者数6万人突破、23年10月の攻撃開始以降

ビジネス

ECB、貸し出しオペに「気候ファクター」導入へ 担
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経験豊富なガイドの対応を捉えた映像が話題
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 5
    アメリカで牛肉価格が12%高騰――供給不足に加え、輸入…
  • 6
    グランドキャニオンを焼いた山火事...待望の大雨のあ…
  • 7
    タイ・カンボジア国境紛争の根本原因...そもそもの発…
  • 8
    運転席で「客がハンドル操作」...カリフォルニア州、…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「出生率が高い国」はどこ?
  • 10
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 1
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 2
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 3
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心中」してしまうのか
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 6
    中国企業が米水源地そばの土地を取得...飲料水と国家…
  • 7
    レタスの葉に「密集した無数の球体」が...「いつもの…
  • 8
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 9
    タイ・カンボジア国境で続く衝突、両国の「軍事力の…
  • 10
    アメリカで牛肉価格が12%高騰――供給不足に加え、輸入…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 4
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 5
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 6
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 9
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 10
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中