【歴史解説】核開発は当然「国家の権利」...米・イランの確執の原因「攻防の歴史」を振り返る
A Durable Nuclear Deal
イランの最高指導者アリ・ハメネイ師は、制裁緩和と引き換えに核開発計画を放棄したリビアの指導者ムアマル・カダフィの末路を忘れていない。「カダフィは空虚な脅しに屈して核装備を全て集め、西洋人に差し出した。すると西洋人はリビアを攻撃し、その石油を奪った」
イランの指導層から見れば、アメリカの真意は核の不拡散ではなくイスラム政権の転覆にある。国内世論は交渉による解決を求めているが、アメリカに屈したとみられたら体制の根幹が揺らぐ。
核開発は国家の権利とする主張は、51年の石油国有化宣言と並ぶ国の柱だからだ。王政時代と同様、今のイランも「核燃料サイクルへの完全なアクセス」を得るという大原則は絶対に譲れない。
イランには既に核開発の計画があり、技術がある。米政府の目標がイランに核兵器保有の一線を越えさせないことにあるならば、無条件降伏を突き付けるより、検証と相互の妥協に支えられた交渉こそが賢明な選択だろう。
実のある制裁緩和と引き換えならばウラン濃縮の上限設定に応じる用意があると、イラン側は示唆している。これなら出発点になる。無条件降伏など、求めても無駄だ。