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中国経済

中国は「貯金モード」...関税戦争の休戦中にも「ヤミ輸出」が回っている

CHINA GETS A BREATHER

2025年5月27日(火)13時30分
ジェームズ・パーマー(フォーリン・ポリシー誌副編集長)
江蘇省の自動車部品工場

中国経済はいまだに輸出に依存(江蘇省の自動車部品工場) SI WEIーVCG/GETTY IMAGES

<先行き不安から「消費より貯蓄」に走る国民。ハイテクブームは限定的で、不正も横行する...>

米中が関税戦争の一時停戦に合意してから1週間以上が経過したが、実質的な関税率はまだ過去最高水準にとどまっている。

米ピーターソン国際経済研究所によると、アメリカの対中関税、中国の対米関税の平均はそれぞれ51.1%と32.6%で、一般的に報じられている30%と10%を大幅に上回る。

アメリカの対中関税が当初の145%から大幅に緩和され、中国の製造工場はアメリカ向け生産ラインの稼働を再開した。しかし冷え込んだ貿易環境は依然、中国経済に影を落としている。4月の消費者物価指数や消費者マインド指数は3月より鈍化した。


経済の自立性を高めようと躍起になってきた中国政府と、国外市場への依存から抜け出せない工場との間には明らかな乖離がある。中国の指導者は長年、内需拡大を目指してきたが、国民の「消費より貯蓄」意識がその足かせとなっている。

習近平(シー・チンピン)国家主席が2020年に打ち出した「双循環」戦略は、外国貿易への依存を減らしながら国内消費を促すことを目的としていた。

しかし、新型コロナのパンデミックという壁が立ちはだかり、ロックダウン(都市封鎖)による経済的なストレスで市民にとって貯蓄の重要性はより高まった。

一時の緊張感こそ消えたが米中貿易戦争はまだ終わっていない。中国人民銀行は5月20日、国内投資を促すため、基準貸出金利を0.1%引き下げた。

李強(リー・チアン)首相は政府関係者が集う会議で、「国内循環」を促すよう呼びかけたが、ビジネス界の国内消費の拡大への期待は薄く、楽観的ではない。

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