印パのむなしい停戦...インド・パキスタンどちらの政府でもない「本当の敗者」とは?
War Without a Winner
最近の武力衝突は、インドのナレンドラ・モディ首相のようなポピュリスト指導者は自国民だけでなく、地域全体にとって重大なリスクだと思い知らせる出来事でもあった。南アジアを核戦争の危機にさらしたのは、隣国を武力で支配する「無敵のインド」というモディの幻想だ。
モディの幻想と軍の抑圧
残念なことに、対立する国家が国外の代理勢力を支援するのは、非正規戦の厳しい現実の1つだ。それでも、ほかの主権国家への軍事的な直接攻撃は正当化できない。同等の防衛能力を持つ国家が相手の場合は特にそうだ。
アメリカやイスラエルは、イランがイエメンやレバノン、パレスチナ自治区ガザの代理勢力を支援していると非難するがイランへの直接攻撃はおおむね避けている。地域的惨事を招きかねないと理解しているからだ。イスラエルによる昨年10月のイラン空爆は危険な例外だった。
核保有国パキスタンの場合、潜在的な破壊力はイラン以上だろう。にもかかわらずモディは今回、パキスタン領内の空爆に踏み切った。どれほど精密型の攻撃だろうと、これは主権侵害行為だ。
最近の両国の停戦合意は結果的に、モディの幻想に疑問符を突き付けている。
パキスタンの代理勢力ネットワークに対しては、外交的・経済的ツールがある。
パハルガムでの事件直後、インドは友好国アメリカやサウジアラビア、国際機関に証拠を提出して制裁や金融規制を要求し、既に低迷中のパキスタン経済にさらに圧力をかけられたはずだ。だがとっさの感情に駆られて、その機会を逃したようにみえる。