なぜ「イスラム国」は勢力拡大しているのか?...アフリカの「空白地帯」に生まれる「カリフ国構想」
The Gods of Chaos
ナイジェリア
ナイジェリア当局はイスラム武装組織ボコ・ハラムの活動を抑えることができずにいる。ボコ・ハラムは現地語で「西洋の教育は罪」の意味。主に中央政府による統治が及ばない北東部で活動しており、欧米の影響を断つためと称して多くの人々を殺害している。
15年にISはナイジェリアに進出し「IS西アフリカ州」を創設。ボコ・ハラムは当初はISに忠誠を誓ったが、1年もたたずして決裂、以来、勢力争いが続いている。
ナイジェリア軍はどちらの組織もつぶすことができず、その結果200万人以上が避難民となっている。
コンゴ民主共和国
東部の北キブ州は世界有数の貧困地帯で、100以上の武装勢力が活動している。「IS中央アフリカ州」も同地での反政府運動がルーツだ。19年にISの幹部が中央アフリカ州を承認したのは、シリアからの逃げ場所確保の意図もあった。
IS中央アフリカ州はこれまでに4000人以上を殺害している。21年にはウガンダに進出、身代金目的で人質を取ったり簡易爆弾による攻撃を行って死者を出している。
ジハーディストは中央政府による統治が十分に及んでおらず、近代的理性と多元主義が伝統的な(特にイスラム教に基づく)社会や権力構造を揺るがしている地域に身を潜め、そこを根城に殺人などの残虐行為を行う。地域紛争や搾取に苦しむ人々には、ISが掲げる宗教国家論はある種の救済策に見えるのだ。
だが中央政府の強力な統治が広い地域に及ぶようになれば、IS系組織の勢力は弱まり、小さくなっていくはずだ。

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