最新記事
ヨーロッパ

2カ月たっても消えない......ハンガリー「日本人女性DV死」への怒り

A Tragic Life

2025年4月3日(木)16時12分
池田和加(ジャーナリスト)

「もうすぐ帰国」その直前に事件は起きた

首を絞められた事件をきっかけに、みどりさんは子供たちを連れて日本に一時帰国する決断をした。ところが帰国直前、デイビッドは国境を越えた子供の不法な連れ去りを防ぐハーグ条約違反に当たる、と主張。みどりさんは上の子供を残していったん日本に帰国したが、結局ハンガリーに戻らざるを得なかった。

その後、不倫関係にあった女性と結婚するため、デイビッドはみどりさんに無理やり共同親権に合意させ、2023年3月に離婚した。共同親権を選んだのは、「共同で育てる」名目なら養育費を支払わなくていいからだった。離婚後、デイビッドはオランダに移住。一方、みどりさんと子供たちはブダペストに残され、経済的に困窮し、日本の実家からの仕送りと掃除の仕事で何とか生活していた。


離婚後もデイビッドは数カ月に1度、事前の連絡なくブダペストに戻り、みどりさん宅に滞在するようになった。その時も自分の食べ物だけを買い、困窮する家族には何も与えない。23年7月、みどりさんはパテント協会のスプロンズ弁護士に相談。ハーグ条約に違反せず日本に帰るため、共同親権から単独親権への切り替え申請を始めた。

これがデイビッドを激高させた。彼はみどりさんのパソコンを盗み、子供の学校や友人たちにみどりさんを中傷するメールを送り付けた。恐怖を感じた彼女は部屋の鍵を交換したが、アパートの持ち主はデイビッドの両親となっており、共同親権者だったことからも、警察はデイビッドが家の中に入ること認めた。

単独親権への切り替え手続きは今年1月にはほぼ終わり、3月には正式な許可が得られる見込みだった。

「もうすぐ日本に帰れる。もう何も望まない。ただ、子供たちと静かに暮らしたい」と帰国を心待ちにしていたみどりさん。そんな矢先の1月29日に事件は起こった。

事件後、地元警察は不適切な対応について謝罪し、担当した警察官5人の懲戒処分を決定した。DV問題の対応を訓練された警察官の増員や、過去1年間のDV報告の再調査にも踏み切った。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

インドの対米工業品関税ゼロへ、農産物は一部保護維持

ビジネス

5月のG7財務相会議、為替対応が議題に 中国念頭に

ビジネス

米ウォルマート、時価総額が初の1兆ドル突破

ワールド

ディズニー新CEOにダマロ氏、テーマパークトップ 
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗り物から「勝手に退出」する客の映像にSNS批判殺到
  • 3
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れるアメリカ」に向き合う「日本の戦略」とは?
  • 4
    地球の近くで「第2の地球」が発見されたかも! その…
  • 5
    トランプ不信から中国に接近した欧州外交の誤算
  • 6
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 7
    最長45日も潜伏か...世界が警戒する「ニパウイルス」…
  • 8
    ICE射殺事件で見えたトランプ政権の「ほころび」――ア…
  • 9
    少子高齢化は国防の危機──社会保障を切り捨てるロシ…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 5
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から…
  • 6
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 7
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 8
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 9
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 10
    パキスタン戦闘機「JF17」に輸出交渉が相次ぐ? 200…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中