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2カ月たっても消えない......ハンガリー「日本人女性DV死」への怒り

A Tragic Life

2025年4月3日(木)16時12分
池田和加(ジャーナリスト)
DV

2月8日にブダペストで開かれた追悼集会にはさまざまな国の出身者が参加した COURTESY OF WAKA IKEDA

<暴力と搾取の末、ハンガリーで夫に殺された日本人女性。その人柄を悼む声と、彼女をDV被害から守らなかった警察当局や日本大使館への憤りがやまない>

1月29日、ハンガリーの首都ブダペストにあるアパートの一室から出火し、日本人女性みどりさん(43歳、仮名)の遺体が見つかった。当初、地元警察はたばこによる失火と断定したが、元夫のデイビッドがみどりさんへのDV(ドメスティック・バイオレンス)を繰り返していたことを知る友人たちの声で再捜査を開始。2月3日に元夫が殺人容疑で逮捕された。事件から2カ月がたつが、彼女を知る人たちの間には、その人柄を悼む声と、警察や日本大使館の対応への憤りがやまない。

「困った人を見るとすぐに話しかけて友達になる自称『おせっかいおばちゃん』でした」と、日本人の友人は語る。10年以上ブダペストに住んでいたみどりさんは、新しく来た人には国籍を問わず積極的に手を差し伸べた。


「バスや電車の乗り方や、どこで何を買ったらいいか教えてくれるだけでなく、人と人をつなげるのが大好きだった。常に自分より友達を優先する明るく思いやりのある謙虚な女性だった」「国籍を問わず、困っている人を温かく迎え入れた。そんな彼女だったからこそ、死後にこれほど多くの人々が立ち上がり、デモが起こることになった」と、友人たちは口をそろえる。

「黒いオーラ」を持つ男

2月8日にブダペストで行われたデモには日本、ハンガリー、イスラエル、フィンランド、アメリカ、ロシアなどさまざまな国の出身者が参加した。デモの中心メンバーの1人であるロシア人ジャーナリストのアナスターシャ・ソコロワによれば、みどりさんは経済的に苦しかったアメリカ人女性の家を「母親と子供には清潔な家が必要」と、無料で掃除していたという。

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