トランプの「2つの重大ミス」がプーチンの立場を強くした...手玉に取られないための「交渉術」とは?

How to Negotiate With Putin

2025年3月25日(火)18時55分
ローリー・ブリストウ(元駐ロシア英国大使)

既にプーチンは何の犠牲も払わずに、大きな譲歩をいくつか手に入れている。特に大きいのは、トランプ政権が交渉のテーブルからウクライナのNATO加盟と領土の完全回復というポイントを外すと表明したこと、そしてゼレンスキーの大統領としての正統性を疑問視していることだ。

この状況はトランプが1期目にアフガニスタンのイスラム主義勢力タリバンと結んだ20年の「ドーハ合意」を思い出させる。この合意でタリバンは何の義務も負わずに、アフガニスタンからの外国部隊の撤退という成果を獲得。これが翌21年8月のアフガニスタン政府の崩壊と、首都カブールの陥落につながった。


ロシアを真の圧力にさらし、恒久的な停戦の可能性を高めるために必要なのは、ロシアの立場が必然的に弱まる条件をつくることだ。具体的にはウクライナの防衛力を強化し、ロシアに対する経済的圧力を強め、NATOが団結してロシアの脅威に立ち向かうこと。ロシアは停戦以外のあらゆる方法がより悪い事態につながることを理解して、初めて真の停戦を検討するだろう。

一方でアメリカは、同盟を分裂させる行動を避けなければならない。NATOのほかの加盟国に対応の強化を要求しながら、同時にそれらの国に貿易戦争や文化戦争を仕掛け、同盟諸国の領土に対して領有を主張するのはおかしい。

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