トランプの「2つの重大ミス」がプーチンの立場を強くした...手玉に取られないための「交渉術」とは?

How to Negotiate With Putin

2025年3月25日(火)18時55分
ローリー・ブリストウ(元駐ロシア英国大使)

従ってウクライナの安全を保証するには、ロシアと協力するのではなく、抑止することが重要になる。選択肢は2つ。大きな犠牲とリスクを背負って、ロシアのさらなる侵略を阻止するのか。それとも、そうした努力をせずにさらに大きな犠牲とリスクを背負い、もたらされる結果に向き合うのか。どんな展開になるにせよ、イギリスと欧州、カナダはアメリカに依存しない独自の防衛を強化する必要がある。

トランプの提案に対するプーチンの対応から、彼は交渉に際して自分が優位にあると承知していることが分かる。プーチンは、トランプが取引を焦っていることや、ウクライナやNATO諸国にいら立ちを募らせていることを認識しており、これをロシアにとって有利に働かせることができるとほぼ確信している。


平和を維持する方法論

プーチンの立場が非常に強くなった要因は、トランプの2つの重大なミスだ。1つはウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領に強い圧力をかけながら、プーチンには相応の圧力をかけなかったこと。もう1つはプーチンに対して米ロ関係悪化の原因への対処を求めないまま、両国関係の正常化に踏み出そうとしていることだ。

プーチンの狙いは、ロシアの利益を考慮に入れなければならない、ロシアを孤立させてはならないと思い知らせることにある。交渉に当たってプーチンに最大限の要求を提示させ、ほかの国々がそれに応じるのを待つトランプのやり方は、まさにプーチンの望みどおりだ。

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