核軍縮が停滞し、核使用リスクが高まる世界で、各国はいかなる責任を負うのか
SECURITY
ILLUSTRATION FROM PROJECT SYNDICATE’S THE YEAR AHEAD 2026 MAGAZINE
<核兵器は長年、相互抑止と国際的な規範によって何とか封じ込められてきた。しかし今、その前提は崩れつつある。核軍縮協議は停滞し、核保有国は威嚇を強めている。核秩序が揺らぐ世界で、各国はいかなる責任を負うのか>
▼目次
形骸化したNPTの精神
問われる核抑止論の現実
核兵器の脅威はもはや、相互合意に基づくルールや規範によって、どうにか抑え込まれているという状況ではない。猛烈な勢いで、人類全体を崖っぷちに追い込みつつある。
今や世界の核兵器は東西冷戦終結後、初めて増加傾向にある。兵器自体もより致命的かつ多様化した結果、攻撃性を増している。核軍縮協議は行き詰まり、協定の多くは期限切れか、空文化して信頼性を失っている。さらに悪いことに、核をめぐる言説は威嚇の色を強め、核保有国は対立姿勢をむき出しにしている。
2025年には、懸念すべき動きが相次いだ。ウクライナに侵攻中のロシアのウラジーミル・プーチン大統領は核使用の脅しを続け、ドナルド・トランプ米大統領は核実験再開を指示したと明言。中国は1960年代以降で例を見ない規模で戦略核戦力を増強している。何より不吉なことに、5月には核保有国のインドとパキスタンが交戦状態に入った。
世界を核による自滅の脅威から救うべく68年に国連総会で採択された、核拡散防止条約(NPT)の理念に真っ向から反している。核廃棄やIAEA(国際原子力機関)の査察の下での核軍縮を求めるNPTは中国、フランス、ロシア、イギリス、アメリカを「核兵器国」に定め、この5カ国に核軍縮を義務付けている。
NPTの締約国は、世界のほぼ全ての国に当たる191の国と地域。非締約国は5カ国で、そのうち南スーダンを除く4カ国(インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮)が核を保有する。北朝鮮は85年にNPTに加入したが、条約違反との非難を浴びるなか、03年に正式脱退を表明。今や核開発を公然と推し進めている。





