最新記事
荒川河畔の「原住民」(23)

7回繰り返した自殺未遂について、このホームレス男性は穏やかな顔で語った

2025年3月5日(水)16時15分
文・写真:趙海成

これから2回に分けてお届けする物語に対しても、皆さんから感想やコメントが届くことを期待している。

※後編はこちら:7回の自殺未遂を経験しながら、若者の自殺を止めたホームレスの死生観

荒川河川敷のホームレス

荒川河川敷で暮らす征一郎さん

常に「死」と隣り合わせ

征一郎さんの物語は、心が温まるものばかりではない。彼が過去の経験を話すときには、「死」という言葉が離れないような気がした。

おそらく誰もが語ることをタブーだと考えるこの言葉に、彼がなぜ「興味津々」なのか。征一郎さんは、こう話した。

「自殺未遂は7回あった。一時期、毎日死にたいと思っていた」

度肝を抜かれたが、そう話したときの彼は、顔つきが穏やかで余裕が見えた。

彼はどうして自殺しようとしたのか、そのためにどんな手段を取ったのか。いま生きている理由はどこにあるのか。今後、彼が自殺する可能性はあるのか。自殺しようとしている人をどうやって止めるのか。

なぜ何度も自殺未遂を重ねたのか

征一郎さんへの「死」に関する一連の質問は、もしかすると冷酷で、倫理に触れる危険性さえある。

でも、聞かなければならない。世の中の多くの人が、これらの問題の中で迷い、もがき苦しんでいる。

特殊で非凡な人生経験が形作った征一郎さんの死生観が、正しいのか、間違っているのかは分からない。人それぞれの考えがあるだろうが、私にとって最も大事なことは、彼の真実を記録することだ。

現代では、映画やテレビ、新聞雑誌、ゲームの中でも、殺し合いや死に関わる場面が随所に見られるが、命の価値や自殺者の心の世界などを深く考えさせるものは少ない。

たまたま私は日本で、征一郎さんという、何度も自殺未遂を経験したホームレスに出会うことができた。彼の波瀾万丈な人生を聞いて、大いに視野が広がった。

まさに「听君一席活 勝読十年書」(中国の言葉で「君のひと言は、十年の書を読むに勝る」という意味)だ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米国版の半導体の集積拠点、台湾が「協力分野」で構想

ワールド

アフガン北部でM6.3の地震、20人死亡・数百人負

ワールド

米国防長官が板門店訪問、米韓同盟の強さ象徴と韓国国

ビジネス

仏製造業PMI、10月改定48.8 需要低迷続く
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「今年注目の旅行先」、1位は米ビッグスカイ
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 5
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 6
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に…
  • 7
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中