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荒川河畔の「原住民」(17)

生活保護はホームレスを幸せにするか、それを望んでいるのか...福祉国家・日本の現実

2024年12月28日(土)15時50分
文・写真:趙海成

「住居も食事も世話になるけれど、縛られるのは嫌だ」

次は、施設経験がない人の話だ。

「俺はホームレスになって12年で、今70歳、生活保護を申請したことはない。もし申請すれば、ちょっと順番を待てばもらえるだろう。申請したくない理由は、施設に対する行政管理がよくないと聞くから。

表向きはいいが、中は違うとよく言われている。お金(保護費)をくれ、住むことも食べることもお世話になるんだけど、縛られるのは嫌だ。それに内部の人間関係もよくないらしく、住んでいる人がハッピーな感じはなさそうだ。

施設とかアパートを区役所が直接は運営しないで、下請けに任せるのが根本的な問題だと思う。管理人みたいな人に管理されるが、優しくない人もいる。トラブルも発生するかもしれない。だから、入ってもすぐに出てしまう人がいるわけだ。

もちろん、体の具合がよくない人にとっては施設に入るのがいいと思うが、俺はまあまあ元気だし、そんな所なら入らないほうが楽だ」

2人の福祉施設に対する印象はいずれもネガティブだ。ただし、強調しておきたいのは、これはごく一部の声であるし、彼らはそもそも路上生活を選んだホームレスであること。生活保護を受け、いま施設で生活している人の中には満足している人もきっといるだろう。

客観的に言って、問題のある施設は確かに存在するが、困っている人たちのために良心的に運営されている施設もたくさんあるはずだ。悪質な「生活保護ビジネス」「貧困ビジネス」も一時期話題になったが、現在運営中のホームレス向け施設の大半は、以前より改善されてきているようだ。

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