最新記事
荒川河畔の「原住民」(17)

生活保護はホームレスを幸せにするか、それを望んでいるのか...福祉国家・日本の現実

2024年12月28日(土)15時50分
文・写真:趙海成

今まで自由な一人暮らしだった彼らが、今度は他の人たちと一緒に生活しなければならなくなる。摩擦やトラブルが生じるおそれがある。我慢できる人なら続けて住めばよいが、我慢できない人は再び元の生活状態に戻ってしまうかもしれない。

そうした施設について、ホームレスたちはどう考えているのか。もちろん一部の声ではあるが、生活保護を放棄したことがあるホームレスと、生活保護をもらいたくないホームレス、2人にインタビューした。

「10年前に施設へ。お金を3万円しかもらえなかった」

生活保護を受給し、施設生活を経験したあるホームレスの話。

「10年前、私は(病気になって)施設に入ったが、病状はむしろ重くなった。中は話に聞いていたほどよくなかった。小さな施設だと20人以上を受け入れるが、浴室と洗濯機は1つずつしかなかった。大きな施設では50人以上が入居できるが、洗濯機は6台しかなく、みんな列に並んで待たなければならなかったらしい。

私が入居していた施設は2人で1室だった。私は体が弱っていたので、部屋で静かに休む必要があったが、ルームメイトはいつもラジオをつけて音楽を聴いていて、うるさくて眠れなかった。

最終的に、そこを出ることにした。最も不満で悔しいのは、国から毎月もらえる13万5000円の補助費は、家賃と食事代を差し引いても7万円くらい残るはずなのに、実際に私がもらえていたのは3万円しかなかったことだ。

これはまだいいほうで、5000円しかもらえない施設もあったらしい。じゃあ、残りのお金はどこに行ったのかと聞かなければならない。誰かが自分の財布に入れたんじゃないだろうか。当時は、泣き寝入りするよりも、自殺して抗議しようと思ったぐらいだ」

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

IAEA、ナタンズ地下施設への「直接攻撃」確認 被

ビジネス

米6月住宅建設業者指数32に低下、2年半ぶり低水準

ワールド

中ロ首脳、中東情勢巡り近く電話会談へ=ロシア大統領

ビジネス

米輸入物価、5月は前月比横ばい エネルギー製品の低
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタ…
  • 6
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 7
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?.…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中