最新記事
日本社会

日本で性犯罪が起訴に至るケースはたったの1.1%

2024年12月25日(水)11時00分
舞田敏彦(教育社会学者)

この5年間に、警察が検挙した強制わいせつ・強制性交事件数は2万6645件。先ほどの認知事件数で割って、検挙率は71.41%となる。検挙された犯人は検察に送られ、起訴するかどうかが判断されるが、同じ5年間の同罪種の被疑者で起訴されたのは8861人、不起訴となったのは1万3823人。よって起訴率は39.06%。

被害届受理率3.95%、検挙率71.41%、起訴率39.06%という数字をかけ合わせることで、性犯罪事件の何%が裁判まで行くかを視覚化できる<図2>。

newsweekjp20241225012337-5c76bf64bdfbdecb0ccf45ea067a7d35c3146d40.png


大雑把に言うと、実際に起きた事件のうち警察によって事件化されるのは3.95%、裁判まで行くのは1.10%ということになる。91件中1件だ。性犯罪が立件され、裁判にまで至る確率は低い。滋賀医大生事件の二審判決を下した裁判官に批判が集まっているが、それ以前の段階で大半の事件が闇に葬られている。

国もこういう状況に無関心ではなく、昨年の刑法改正で性犯罪の構成要件が大幅に変わった。強制性交等罪が不同意性交等罪に変わり、体の硬直(フリーズ)、地位に基づく不利益の憂慮等により拒絶の意思を表明できなかった場合も、この罪は成立する。これまでは加害者の暴行・脅迫、被害者の明瞭な拒絶という要件が壁になり立件が阻まれてきたが、今後はそうでなくなる。

こうした法改正は、日本のあまりにも酷い現状を変えようという運動の成果だ。

<資料:UNODC「Statistics on crime」

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ロシア、北朝鮮にドローン技術移転 製造も支援=ウク

ビジネス

米6月建設支出、前月比0.4%減 一戸建て住宅への

ビジネス

米シェブロン、4─6月期利益が予想上回る 生産量増

ビジネス

7月ISM製造業景気指数、5カ月連続50割れ 工場
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 2
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 3
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿がSNSで話題に、母親は嫌がる娘を「無視」して強行
  • 4
    カムチャツカも東日本もスマトラ島沖も──史上最大級…
  • 5
    【クイズ】2010~20年にかけて、キリスト教徒が「多…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    これはセクハラか、メンタルヘルス問題か?...米ヒー…
  • 8
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 9
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 10
    ニューヨークで「レジオネラ症」の感染が拡大...症状…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 3
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経験豊富なガイドの対応を捉えた映像が話題
  • 4
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 5
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 8
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 9
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 10
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 5
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中