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9割が生活保護...日雇い労働者の街ではなくなった山谷の「現在を切り取る」意味

2024年12月23日(月)06時45分
印南敦史(作家、書評家)

特に印象的なのは、「"命"と"暮らし"を自分たちで守る共同事業」を行っている「企業組合あうん」の共同創業者である中村光男さんのことばだ。1980年代の闘いも含めて見つめていくと、"山谷のやり方、山谷らしさ"が見えてきて、それが今、「地域社会の中で求められているものなのでは」と感じているというのだ。


「いろんな人が、『あうん』を見学しに来るじゃない。そこでよく言われるのが、『人のつながりがあまりに濃い』ということ。何でそうなるのか、どうやってつくったのか聞かれるの。それはさ、食えなきゃ一緒に食えるようにしようとか、仕事がなければ一緒に働きに行こうとか。そういうのってもともと山谷は当たり前だったし、それを大切にしてきたからなんだよね。でも、地域社会にはそれがない。目に見えない差別や分断が根を張っている。みんなバラバラで、そのなかでどうつながっていけるかが一番の問題。一旦、バラバラになったものをつなぎ直していくわけだから、生半可ではできないよね」(205ページより)

しかも、高齢化はどんどん進んでいる。東京都対策本部が作成した「東京都山谷対策総合事業計画」(令和5年度〜令和7年度)によれば、1万5000人ほどいたドヤ(簡易宿泊所)の住人は、2021(令和3)年度の時点では3000人ほどまでに減少しており、ドヤは128軒(従来型115軒、ビジネス・観光向け13軒)となっているという。

日雇い労働者の割合は2.6パーセント、住民の9割が生活保護受給者で、平均年齢は67.5歳だが、70歳以上が5割を超え、高齢化率は7割近くにまで及んでいるのだそうだ。

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