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9割が生活保護...日雇い労働者の街ではなくなった山谷の「現在を切り取る」意味

2024年12月23日(月)06時45分
印南敦史(作家、書評家)


 山谷はカオスな場所だった。地べたに座り込んで酒を酌み交わす。呑んだくれて道端に倒れる、立ちション、ゴミの投げ捨て、「モラル」という言葉を説明するのがばかばかしくなるようなところである。さらに、この街で暮らす人たちには地方からの流れ者が多く、家族から逃れてきたような人も珍しくない。こういう世界にいると、どこかほっとするような気持ちがした。(「プロローグ」より)

完璧主義で、自分が精神的に追い詰められたときも救いの手を求めることができなかった著者でさえ、「とりあえず生きてるし、まあ、いっか」と思えるような何かが山谷にはあったのだという。すなわちそれが、本書を執筆する動機だったわけだ。

周りからは冷たい目、現場では重労働、田舎では立場がない

だがそんななか、今はもう昔ながらの山谷はないという現実に直面する。かつて多かった日雇い労働者とは違い、暮らしているのは仕事がなくなり、生活が成り立たなくなっている人たちばかり。「闘う労働者」はもういない閑散とした街になっているからこそ、"山谷を切り取る意味"も希薄になっているということである。


とはいえ、この土地のもつ宿命のようなものは決して消えたわけではなく、粛々と日々が続いており、人は生きている。闘争の時代から半世紀を経て、看護師として山谷で働くようになった私は、この街で会った人々、見聞きした出来事を遺したいと強く思うようになった。(「プロローグ」より)

かくして著者は、江戸時代以前にまで時計を戻し、そこからバブル崩壊に至るまでの山谷の歴史を克明にたどる。

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