ニュース速報
ビジネス

インタビュー:関税が荷量に影響、米政策を見極め=川崎汽船社長

2025年07月16日(水)17時33分

 7月16日、川崎汽船の五十嵐武宣社長(写真)はロイターのインタビューに応じ、米関税の影響で荷量に影響が出ており「一部の輸送で船が全部埋め切れなかったり、コンテナ船でも東アジアから米国向けの便数を減らした時期がある」と明らかにした。写真は同日、都内で撮影(2025年 ロイター/Kathleen Benoza)

Kentaro Okasaka

[東京 16日 ロイター] - 川崎汽船の五十嵐武宣社長は16日、ロイターのインタビューに応じ、米関税の影響で荷量に影響が出ており「一部の輸送で船が全部埋め切れなかったり、コンテナ船でも東アジアから米国向けの便数を減らした時期がある」と明らかにした。「物量に応じて船腹を調整している」と語り、今後もトランプ米政権の政策を注視しながら必要な対応を講じていくと強調した。

同社は、2025年度に受ける米関税の影響を300億円と織り込んでいる。内訳は自動車船事業の輸送台数減で135億円、コンテナ船事業の荷量減や運賃下落で165億円としている。

五十嵐社長は、関税の影響を最も大きく受けるのはこのコンテナ船と自動車専用船だとし「特にコンテナ船の方は米中の関税交渉が大きく影響を与える」と指摘。8月中旬に期限を迎える関税一時停止の行方に注目していると語った。仮に関税が適用されることになれば「荷動きや市況に対しては下押し懸念になる」と指摘した。

自動車専用船については「まさしく今、日本政府が自動車に関する交渉をしていると理解しているが、足元ではそれほど大きく数量の減少にはつながっていない」とした。ただ、関税が販売価格に転嫁された場合の影響は注視しているという。一方、国ごとに提示された相互関税の税率が異なるため、物の流れが「変わってくる可能性がある」と語り、輸送距離が延びれば事業にプラスの影響が出る可能性もあるとした。

関税への対応策として、米国航路に投入している船を欧州や中近東といった他の航路に向けたりして「オペレーションで対応できる間はオペレーションで対応する」とする一方、「状況次第で、また違った点を考える必要が出てくる」と説明。「戦略的な調整ということになると、例えば船というアセットを少し減らすということもあるのかもしれないが、通商政策自体がどういう方向に行くのかはっきりしないと、いきなり削減ということにはならない。まだ様子を見てる段階だ」と話した。

米国は、中国で建造された船舶に入港料を課すことも計画している。五十嵐社長は、「世界の建造能力の6割が中国にあり、中国の造船所を無視してわれわれの商売はできる状態ではない」と指摘。今後も一定程度、中国の造船所への発注は不可避だとした。「(入港料の)発動が10月なので、今後のルール作りも含めて進展を注視し、どういったルールが実際発令されるのかを見た上で考えていく」と語った。

このほか、五十嵐社長は環境への対応にも言及し、11隻を現在運用する液化天然ガス(LNG)を燃料とした船舶に加え、アンモニアが燃料の船の調達を検討していることを明らかにした。「二酸化炭素の排出に対してはコストがかかっていく社会になっている。より良いサービスを提供するためには低炭素、脱炭素のサービス、そういった燃料を使うことのできる船の調達はしっかり考えていきたい」と述べた。

(岡坂健太郎 編集:久保信博)

ロイター
Copyright (C) 2025 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ政権、州に有権者データと投票機器へのアクセ

ビジネス

財政政策が日本国債格付けのリスク、参院選後の緩和懸

ワールド

インドネシア中銀、0.25%利下げ 米との関税合意

ビジネス

アングル:円安への備え進むオプション市場、円買い介
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 2
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏にも送電開始「驚きの発電法」とは?
  • 3
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長だけ追い求め「失われた数百年」到来か?
  • 4
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 5
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 6
    「巨大なヘラジカ」が車と衝突し死亡、側溝に「遺さ…
  • 7
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 8
    約3万人のオーディションで抜擢...ドラマ版『ハリー…
  • 9
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 10
    「死ぬほど怖かった...」高齢母の「大きな叫び声」を…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 5
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 6
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 7
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 8
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 9
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 10
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 7
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 8
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 9
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中