最新記事
荒川河畔の原住民⑮

わが友人、ホームレス、テントに暮らす荒川の釣り名人。奇跡が起きることを祈っている

2024年12月11日(水)21時00分
文・写真:趙海成

荒川河川敷のホームレス荒川河川敷のホームレス

川辺で大きなスッポンを捕まえた(左上)/これは桂さんがくれた新鮮なタケノコと桑の実(右上)/川辺の森で採れたクルミ(左下)/柿は皮をむいて干し柿にして食べる(右下)

5月中旬、私が寿司と飲み物を持って桂さんのところに食事をしに行ったとき、私はこう聞かれた。「新鮮なタケノコと桑の実を奥さんと子供に食べさせたいですか?」

私はもちろん「食べさせたい」と答えた。

「待ってください」と言って、スコップを持ち、隣の竹林に潜り込んだ桂さん。あっという間に新鮮なタケノコを8本掘って持ってきた。

その後、彼はテントのそばの桑の木から成熟した桑の実を摘んで、一緒に包んでくれた。収穫時間は20分しかかからなかった。

桂さんはおいしいものがあるときに人と分かち合うのが好きだ。ある時には、彼が川から捕まえたばかりの大きなスッポンを他の釣り仲間に渡している場面を見た。しかもお金を受け取らない。

だが彼らには暗黙の了解がある。この釣り仲間はきっと、家に帰ってスッポンを使ったおいしい料理を作った後、桂さんに一部を分け与えて「返す」のだろう。

高級自転車に乗り、ニュースに詳しいホームレス

桂さんが最も誇りに思っているのは、数十万円するという北欧製のスポーツレース用自転車(上の写真にある)だ。この高級自転車は、買い物に出かけたり、彩湖公園でサイクリングをしたり、友達に会いに行ったりするときにしか使われない。

この自転車はあまりにも桂さんの点数を上げてくれるので、その所有者がホームレスだとは誰も思わないようだ。この自転車を押して可愛い女性に話しかけると、相手は大体笑顔で迎えてくれるのだという。

この豪華な自転車のほかに、アルミ缶を運ぶための普通の自転車もある。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ政権、予算教書を公表 国防以外で1630億

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、堅調な雇用統計受け下げ幅縮

ワールド

トランプ氏誕生日に軍事パレード、6月14日 陸軍2

ワールド

トランプ氏、ハーバード大の免税資格剥奪を再表明 民
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 2
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 3
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単に作れる...カギを握る「2時間」の使い方
  • 4
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 5
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 6
    宇宙からしか見えない日食、NASAの観測衛星が撮影に…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    金を爆買いする中国のアメリカ離れ
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中