最新記事
韓国政治

韓国ユン大統領の弾劾決議で賛成票を投じた与党キム・イェジ議員「市民の声を見過ごせなかった」

2024年12月9日(月)23時00分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

だが、自身の信念と相容れない発言には党代表であっても容赦をしないのがキム・イェジ流だ。2022年春、全国障害者差別撤廃連帯による障害者の移動権を求めるデモに参加すると明らかにし、イ・ジュンソク国民の力代表のデモ批判に対して「誤解と嫌悪は成熟した反応ではない」と反論。実際に3月28日、ソウル地下鉄3、4号線で行われたデモに参加し、再びイ·ジュンソク代表を批判した。その後も連日、ユーチューブチャンネル、SNS、ラジオ、インタビューなどで同代表に対する批判を続けた。

また2023年4月、医療法・保健医療人材支援法から看護師と看護助手に関する内容を分離独立させる看護法の決議にあたっても、党の方針に従わずに賛成票を投じた。その後、彼女の母親が看護師だったことが判明し、党の幹部は「国会議員としての所信を尊重する」と述べて処分などは行われずにすんだ。

戒厳令の夜、ハン・ドンフン代表に引き留められた

そんな彼女は、12月3日の夜、非常戒厳令が宣布された時、他の議員と同様に国会に行ったという。国民の力の報道官によれば「キム議員はチュ·ギョンホ院内代表の呼びかけで党本部に集まったが、戒厳解除の決議のために一人で国会に向かった」という。さらに「視覚障害者だったにもかかわらず、キム議員は塀を越えて本会議場に行こうとしたが、ハン・ドンフン代表が危険だと電話で引き止め、塀を越えずに国会の塀の前に留まった」と明かした。

当時、彼女はフェイスブックに「体は塀のために本会議場に入れなかったが、非常戒厳解除決議に対する心はすでに賛成ボタンを100万回は押した」と投稿していた。

その後のインタビューに彼女は「戒厳令が障害者にどれほど恐ろしく切迫した状況になりうるかを今回経験しながら惨憺たる気持ちを感じた」と吐露した。

「聴覚障害者のような場合、戒厳令の宣言さえ報道番組では手話通訳や字幕が出てこないので全く分からなかった。非常戒厳令が戦闘状況にならなかったので幸いだったが、本当に戦闘状況になったとすれば、障害をもつ人びとがどのように待避しなければならないのか、そしてどんな状況なのかさえ判断できなかったかもしれないと、気持ちが暗くなった」と話している。

「国会議員の責務」として弾劾に賛成

そして12月7日のユン大統領の弾劾決議。彼女は他の与党議員たちと共にいったんは議場から退席したが、約30分後に介助者に支えられながら議場に戻り、投票をした。弾劾の賛成票を投じたという。

「弾劾表決があった日、(大統領の)談話を見て混乱を防ぐ方法は弾劾を否決させる方法だけではないと考えました。何よりも市民の皆さんの声を見過ごすことはできなかった」と明らかにした。

続けて「単純に『私は党論を破る』として破ったのではないと申し上げたいし、常に国会議員としての責務を先に考えた」と強調した。また、彼女同様いったんは退席した後に投票に参加したキム・サンウク議員に対しては「党の方針を破ったが、私と同じ気持ちで来られた方がいたんだという安堵感と同志意識があった」と話した。

そんな彼女の行動に対して弾劾決議の後、罵詈雑言が送られてきているという。

「投票以後、党員の方々からの本当に対応できないほどの良くない文字と音声メッセージが多かった。『もう出て行け』『辞職しろ』なども多い」と打ち明けた。

彼女は「弾劾訴追案が再上程されれば同じ行動をするのか」という質問に「弾劾案再発の可否と関係なく私の考えと民意を反映するという気持ちは同じです。国会議員の責務だけに従います」と強調した。

SDGs
2100年には「寿司」がなくなる?...斎藤佑樹×佐座槙苗と学ぶ「サステナビリティ」 スポーツ界にも危機が迫る!?
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ロ産原油、割引幅1年ぶり水準 米制裁で印中の購入が

ビジネス

英アストラゼネカ、7─9月期の業績堅調 通期見通し

ワールド

トランプ関税、違憲判断なら一部原告に返還も=米通商

ビジネス

追加利下げに慎重、政府閉鎖で物価指標が欠如=米シカ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    「これは困るよ...」結婚式当日にフォトグラファーの前に現れた「強力すぎるライバル」にSNS爆笑
  • 4
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 7
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 8
    あなたは何歳?...医師が警告する「感情の老化」、簡…
  • 9
    約500年続く和菓子屋の虎屋がハーバード大でも注目..…
  • 10
    ファン熱狂も「マジで削除して」と娘は赤面...マライ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中