最新記事
容疑者

【独占】ゴルフ場でトランプを撃とうとした男はウクライナ軍とは無関係の誇大妄想狂だった

Exclusive: Ryan Wesley Routh 'Delusional and a Liar'—Ukraine Volunteer

2024年9月17日(火)19時49分
イザベル・バンブルーゲン
逮捕され、手錠をかけられたラウス容疑者

逮捕され、手錠をかけられたラウス容疑者(9月15日、フロリダ州パームシティ) Martin County Sheriff's Office/REUTERS

<ウクライナに飛んで義勇兵として死ぬ、イーロン・マスクからロケットを買ってプーチンの別荘にぶち込む......そんな投稿だらけの容疑者は、実際にも「妄想癖があって嘘つきだった」と知人は語る>

かつてウクライナ軍の外国人部隊に義勇兵として参加していたある人物は、ドナルド・トランプ前大統領(78)の2度目の暗殺未遂の容疑者について、「妄想癖」があり「嘘つき」だと述べている。

【動画】トランプ暗殺未遂、死に直面した瞬間を3D映像が鮮明に再現

トランプは9月15日、フロリダ州ウェストパームビーチに所有するトランプ・インターナショナル・ゴルフクラブでプレーしていたが、彼の警護にあたっていたシークレットサービス(大統領警護隊)が近くで銃を持った人物を発見した。容疑者は現場から逃走したが、その後逮捕され、ライアン・ウェズリー・ラウス(58)と特定された。

FBIはこれは「暗殺未遂」事件だとの見方を示している。トランプ陣営は「トランプ氏は付近で銃撃があったが無事だ」とする声明を発表した。

容疑者は2022年6月に本誌(ルーマニア版)とのインタビューの中で、ウクライナ軍領土防衛部隊内の「多国籍軍団」のために義勇兵を募ったと述べていた。また2023年には米ニューヨーク・タイムズ紙の取材に対して、タリバン政権を逃れたアフガニスタンの兵士たちをウクライナ軍の兵士として雇う取り組みについて話していた。

ロシアはラウスのこれらの主張に飛びつき、ウクライナがラウスを雇ってトランプを暗殺させようとした可能性があるという根拠のない説を煽っている。トランプはこれまでロシアとウクライナの戦争について、アメリカによるウクライナへの巨額の軍事支援を批判してきた。

ウクライナ軍とは無関係

ロシアのウラジーミル・プーチンの盟友であるドミトリー・メドベージェフ元首相は16日、X(旧ツイッター)への投稿で「今回トランプの暗殺を試みたラウスは過去に、ウクライナ軍のために傭兵を募っていた。もしこの人物がウクライナのネオナチ政権に雇われて今回の暗殺を試みていたとしたら」と疑問を呈した。

ウクライナ軍領土防衛部隊多国籍軍は声明を出し、ノースカロライナ州グリーンズボロ出身の元建設作業員であるラウスが「いかなる形でも」同軍の「一員であったり、関係があったり、つながりがあったりしたことは一度もない」と関係を否定した。

2022年3月から同多国籍軍団で(最初は管理業務、その後は新兵採用担当として)2年間働いていたミシガン州デトロイト出身の米市民エブリン・アッシェンブレナーも9月16日、ウクライナの首都キーウから本誌の取材に応じ、2022年からラウスと接触があるが彼は「妄想癖があり嘘つきだ」と語った。

2024年6月中旬に多国籍軍団を離れたアッシェンブレナーは、6月以降、ソーシャルメディア上でラウスは「多国籍軍団やウクライナ軍とは一切関係がなく、これまで関わりがあったこともない」と警告していた。

ラウスは2022年3月から2024年3月にかけてアッシェンブレナーにメッセージを送り、約6000人のアフガニスタン市民を含む「新兵候補」についての詳細な情報を提供した。やめるように言ったところ、「敵対的」になりアッシェンブレナーを「操ろうと」するようになったという。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

日中双方と協力可能、バランス取る必要=米国務長官

ビジネス

マスク氏のテスラ巨額報酬復活、デラウェア州最高裁が

ワールド

米、シリアでIS拠点に大規模空爆 米兵士殺害に報復

ワールド

エプスタイン文書公開、クリントン元大統領の写真など
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦い」...ドラマ化に漕ぎ着けるための「2つの秘策」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 6
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 7
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 8
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 9
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 10
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中