「劇場型政治家」小池百合子の限界...頼れる誰かに擦り寄る力と「丸のみ」にした3つの政策

OPPORTUNIST SUPREME

2024年7月5日(金)17時18分
広野真嗣(ノンフィクション作家)

newsweekjp_20240704050213.jpg

6月12日に取材に応じた乙武は、小池は都民ファ都議から好かれていると証言 HAJIME KIMURA FOR NEWSWEEK JAPAN

「のり弁」やめますの嘘

私たちは、人事を通じた過度な官庁支配が、信じ難いスキャンダルを生んだ前例を知っている。財務省近畿財務局が国有地を相場の10分の1で払い下げた森友学園問題だ。

この問題で財務省の佐川宣寿理財局長(当時)は「記録は残っていない」と嘘をつき、その答弁に合わせて学園側との交渉記録の存在を否定したり、記録の改ざんを行った。


内閣人事局を通じた人事権行使をやりまくったために、官僚が萎縮したばかりか、平気で国益に反する行動を取るようになったのだ。小池都政も、もはやその領域に突入している可能性がある、と私は危惧する。

都民ファ最初の都議選の公約は、情報公開の「のり弁(黒塗り)をやめます」だった。

だがその投開票日の3日後、豊洲市場への移転延期で支払われた移転補償金にまつわる公開請求で、私はほぼ全て黒塗りの文書を受け取った。豊洲移転を延期しただけ無駄だったと受け取られる、と職員が忖度したのだろうか。

6年後の23年3月には、そんな疑念がより深刻になった。

知事と自民党の間で重要な役割を果たしてきた前出の元江東区長、山﨑孝明親子による、都立ゴルフ場の利用回数を記録した文書を公開請求したが、「存在しない」と明記した非開示決定が2カ月後に届いた。

私は既に、庁内で回覧され小池も見た資料の一部を入手しており、この決定通知は嘘である。

小池劇場の終わりの始まり

冒頭のインタビューで乙武は、小池と都民ファ都議の関係について、「これも良い意味で意外なんですが、小池さんって人望があるんです。〈頼られている〉じゃなくて、好かれているんです」と語っていた。

ごますりで言っているのではない。私は現職の都庁幹部からも、「小池知事って魅力的な人」というセリフを聞いた。小池は、距離を縮めた者には惜しむことなくその愛嬌を振りまき、その相手をとりこにする魅力があるようだ。

想像をたくましくすれば、とりこになった者は「小池を独占したい」という欲に駆られるだろう。都知事という絶対的な権力者が相手なら余計に狂おしい。だが当の小池は次々と「頼れる誰か」を取り換える。取り換えた誰かと取り換えられた誰かが敵同士なら、後者は苦しむはずだ。

そこまで考えてハッとしたのは、小池の学歴詐称疑惑の真相を暴露した「元側近の爆弾告発」と題した手記を4月に文藝春秋5月号に発表した弁護士の小島敏郎のことだ。小島は6月18日、小池を公職選挙法違反の疑いで刑事告発した。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ヘッジファンドのレバレッジ、5年ぶり高水準=ゴール

ビジネス

英PMI、6月は予想以上に改善 雇用削減と地政学リ

ビジネス

アングル:三菱重工、伝統企業が「グロース」化 防衛

ワールド

アングル:イラン核開発、米軍爆撃でも知識は破壊でき
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 2
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり得ない!」と投稿された写真にSNSで怒り爆発
  • 3
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「過剰な20万トン」でコメの値段はこう変わる
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    イランとイスラエルの戦争、米国より中国の「ダメー…
  • 7
    「イラつく」「飛び降りたくなる」遅延する飛行機、…
  • 8
    EU、医療機器入札から中国企業を排除へ...「国際調達…
  • 9
    ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イス…
  • 10
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 1
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 2
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 7
    イタリアにある欧州最大の活火山が10年ぶりの大噴火.…
  • 8
    ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イス…
  • 9
    イランとイスラエルの戦争、米国より中国の「ダメー…
  • 10
    「アメリカにディズニー旅行」は夢のまた夢?...ディ…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 9
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 10
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中