最新記事
日台半導体トップ記者対談

【独占】「熟練エンジニア」が集まる...日本の半導体企業「ラピダス」はTSMCにどう対抗すればいいのか?

2024年6月3日(月)14時34分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
林宏文、太田泰彦

Newsweek Japan-YouTube

<日本の半導体企業「ラピダス」が成功するための条件とは?日台トップ記者による対談動画の内容を一部紹介する>

日本政府は台湾の半導体ファウンドリーTSMCに補助金を出しているが、国産半導体企業「ラピダス」も補助している。

ラピダス成功の条件について、『TSMC 世界を動かすヒミツ』(邦訳、CCCメディアハウス)の著者で半導体取材の第一線で活躍する台湾人ジャーナリストの林宏文(リンホンウェン)氏と『2030 半導体の地政学 戦略物資を支配するのは誰か』(日経BP)著者で日本経済新聞編集委員の太田泰彦氏が語り合った。

司会はジャーナリスト・大東文化大学教授で『TSMC 世界を動かすヒミツ』の監修も手掛けた野嶋剛氏が務めた。

本記事では、本誌YouTubeチャンネルの動画「【日台半導体トップ記者対談】ラピダス 成功の条件は?米中新冷戦を日台半導体は生き残れるか」の内容をダイジェスト的に紹介する。

※【対談動画】第1回はこちら:【独占】「思考はアメリカ人そのもの」...TSMCを世界的「モンスター企業」に導いた創業者モリス・チャンの「強烈な個性」とは?

※【対談動画】第2回はこちら:【独占】「実は嫌だった?」... TSMC熊本進出の「本当の狙い」とは??


◇ ◇ ◇

野嶋剛

ラピダスの抱える課題として林氏は「莫大な投資が必要なこと」を挙げる。企業は通常売り上げの5~8%を研究開発費に投じるが、先進技術へのR&D投資は1年で最低20億ドル必要。そうなると最低400億ドルの売り上げが必要となる。

現在それを達成している企業は世界で3つだけ。TSMC、インテル、サムスンだ。

野嶋剛、太田泰彦、林宏文

ラピダスとTSMCには「働く人のエネルギーの高さ」という共通点があると太田氏は語る。TSMCは若い人たちの心に火を付けるような仕組みを作っているのに対し、ラピダスに集まるのは50~60代のエンジニア。

これは悪いことではなく、日本の半導体産業の黄金期を経験した人たちが「もう1回頑張ろう。日本を再興しよう」としている動きは大きなパワーになる。

ただ、このエネルギーが「お祭り騒ぎ」のようになっているとも指摘。はっきりとしたビジネスモデルはあるのか、どのような顧客を考えているのかは未だ不透明に見えるという。

太田泰彦

また、太田氏は昨今の米中対立構造に着目。

アメリカはTSMCと台湾を中国から守りつつも、台湾がアメリカよりも強くなるのは困る。そのため、韓国の企業を助けたり、日本のラピダスをIBMの技術供与で育てたりと、突出した企業を作らないためのリスク分散をしていると話す。

■より詳しい内容については動画をご覧ください。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

報復の選択肢検討とイラン外相、高濃縮ウランは移送と

ワールド

ロシアと中国、米のイラン攻撃を強く非難 対話呼びか

ワールド

焦点:トランプ氏のイラン攻撃は「最大の賭け」、リス

ワールド

韓国、米に懸念表明へ 半導体装置の特例措置撤回観測
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 2
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    イランとイスラエルの戦争、米国より中国の「ダメー…
  • 6
    【クイズ】次のうち、中国の資金援助を受けていない…
  • 7
    ジョージ王子が「王室流エチケット」を伝授する姿が…
  • 8
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 9
    イタすぎる? 人気歌手のコンサートで「はしゃぎすぎ…
  • 10
    ブタと盲目のチワワに芽生えた「やさしい絆」にSNSが…
  • 1
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 2
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 7
    イタリアにある欧州最大の活火山が10年ぶりの大噴火.…
  • 8
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?.…
  • 9
    「アメリカにディズニー旅行」は夢のまた夢?...ディ…
  • 10
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 9
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中