最新記事
制裁

ロシアが「国産」半導体を作るには、東南アジアの中古品を利用しても2030年までかかる

Russia Signals It Can't Ditch Critical Western Tech Any Time Soon

2023年9月28日(木)15時53分
イザベル・ファン・ブリューゲン

「ロシア版iPad」の試作機を見るプーチン。翌年にも大量生産を開始する予定だった(2011年、モスクワ近郊)REUTERS/Alexei Nikolsky/RIA Novosti

<西側の半導体輸出規制で苦しむロシア企業に対し、政府文書は「外国製半導体の使用をやめるべき」としているが、実態はお寒い限り>

【動画】ロシアの「最先端ロボット」には......実は人が入っていた

ロシアが当分の間、西側の重要テクノロジーを手放すことはできない、とロシア政府が最近発行した文書は指摘する。

同国の日刊紙「コメルサント」は9月27日の記事の中で、9月9日付の政府文書を引用し、国内の複数の当局者は2035年までに欧米製の半導体の使用を段階的に廃止するよう要請していると報じた。

ロシアはラップトップやスマートフォンをはじめ、戦車や攻撃用ヘリ、ターゲットシステムなどの幅広い軍事装備に欠かせない半導体を欧米に依存してきた。だがウラジーミル・プーチン大統領によるウクライナ侵攻で諸外国から科された制裁のために、外国製の半導体の調達が困難となり、現在は国内での増産を試みている。

しかし、国産の半導体の信頼性が十分に向上するまでにはしばらく時間がかかりそうだ。コメルサントによれば、現在の不足分を補えるだけの増産を行うためには、少なくとも40~50億ドルのコストがかかる見通し。推定では、2022年11月の時点で、ロシアの半導体需要は国内生産量の3倍超にのぼっていたという。

外国製の輸入が止まらない

OSINT(オープンソース・インテリジェンス)を活用しているウクライナの非営利団体「ウクライナのためのOSINT」によれば、ロシア国内で半導体チップを製造している大手企業は「ミクロン」と「オングストローム」のみで、「いずれも軍事目的の半導体の製造に重点が置いているため、民生用の増産は困難に直面している」。

本誌はこの件についてロシア外務省にメールでコメントを求めたが、返答はなかった。

ロシア政府の文書は、ロシアのテクノロジー企業は兵器の開発や運用、基幹インフラ向け製品を作るときに、外国製の半導体の使用をやめるべきだと述べている。

ロシア産業貿易省はコメルサントに対して、ロシア政府として現在、「無線機器に関しては国内の信頼性のある半導体を「主として使用」すべく努力していると語った。

同国の反体制メディア「Verstka」は7月31日、ロシア税関庁の機密扱いの通関データを引用し、西側諸国からの制裁にもかかわらず、ロシアは今年の上半期に5億200万ドル超の外国製半導体を輸入していると報じた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 9
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 10
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中