最新記事
中国共産党

パレードの裏に思惑が...中国共産党がニューヨークでひそかに進める「工作」とは?

CHINA’S PARADE ANTICS

2024年6月13日(木)14時23分
ディディ・キルステン・タトロウ(本誌米国版・国際問題担当)

アダムズはこれまでの3回のパレード全てに参加し、在ニューヨーク中国総領事の黄屏(ホアン・ピン)と肩を並べて行進した。今年のパレードには黄のほか、アジア・太平洋諸国の外交官らが参加している。

果たしてアダムズは、パレードを企画したのが外国代理人登録法の下で登録された企業のCEOだったことを知っていたのか。本誌はニューヨーク市長室にこの点を問い合わせたが直接の返答はなく、広報担当者から次のようなメールが届いた。

「アジア・太平洋諸島系住民が全米で2番目に多い都市のトップとして、アダムズ市長はこの都市の豊かな文化に貢献するAAPI市民を祝福しています。私たちはニューヨーク市の多様なコミュニティーを体現する全ての文化をたたえます」

ムイは星島日報の親会社である星島新聞集団(本社・香港)が、外国のエージェントとして登録を強いられたのは不公平だと主張する。

「この新聞社で43年間働いてきたが、米政府とは何の問題もない」と、ムイは言う。だが21年に、親会社に新たな投資家が加わった。「米政府は彼が共産主義の中国出身だという理由で、当社に登録を義務付けた。選択の余地はなかった」

「全てを歓迎する」という嘘

ムイによれば、新たな投資家は深圳を拠点とする不動産企業の佳兆業集団の会長で、星島新聞集団の共同会長でもある郭英成(クオ・インチョン)だ。

彼と娘の郭曉婷(クオ・シアオティン)は、21年に星島新聞集団の株式28%超を取得。郭曉婷は親会社の共同CEOであると同時に、星島日報のアメリカ業務を統括している。

1年後には郭英成も郭曉婷も、保有株式の半分を香港の実業家カーソン・チョイ(蔡加赞)に売却したという。

同社の公式サイトや中国のメディアによれば、取締役7人のうち少なくとも5人は、中国共産党が進める影響力工作の「統一戦線」に関与する政治機関や社会組織に属している。

共同会長となったチョイは、中国人民政治協商会議のメンバー。取締役会の共同CEOであるジャーナリストの柴静(チャイ・チン)は、江蘇省人民政治協商会議のメンバー。そして郭英成は、統一戦線の組織である香港潮州商会の創設議長だ。

在ニューヨーク中国総領事館は公式サイトで公開している昨年のパレード報告書の中で、黄屏が人々に「団結を示し、憎しみや人種差別に抵抗し、尊重と友情、包括性と愛を共に推進してより良い未来を迎えるために立ち上がるよう呼びかけた」と書いている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米国版の半導体の集積拠点、台湾が「協力分野」で構想

ワールド

アフガン北部でM6.3の地震、20人死亡・数百人負

ワールド

米国防長官が板門店訪問、米韓同盟の強さ象徴と韓国国

ビジネス

仏製造業PMI、10月改定48.8 需要低迷続く
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「今年注目の旅行先」、1位は米ビッグスカイ
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 5
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 6
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に…
  • 7
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中