最新記事
米大統領選

「信じ難いほど不人気...」ガザ戦争で逆風のバイデン、再選のカギ握るのは「激戦州の少数派」

BIDEN’S BATTLEGROUND ELECTION

2024年6月5日(水)10時43分
ダニエル・ブッシュ(本誌ホワイトハウス担当)
ジョー・バイデン大統領

CHIP SOMODEVILLA/GETTY IMAGES

<イスラエルへの軍事支援に反対するアラブ系・イスラム教徒や左派の若者の間で「バイデン離れ」が加速中。「バイデンvsトランプ」ぎりぎりの戦いの行く末は──>

ベトナム戦争やイラク戦争のときと違い、ウクライナやパレスチナ自治区ガザでアメリカ人が戦っているわけではない。

だが今年のアメリカ大統領選挙は、ベトナム戦争のさなかだった1968年選挙と同様、外交政策がその行方を左右する珍しい例となるかもしれない。

ガザを攻撃しているイスラエルに対するアメリカの軍事支援への反発が、再選を目指すジョー・バイデン大統領を不利な立場に追い込む可能性があるのだ。

ガザで数万人のパレスチナ人がイスラエルの攻撃によって殺されていることに怒っているのは、若者や進歩派、アラブ系やイスラム教徒、そして一部のユダヤ人といった人々だ。有権者全体に占める割合という意味ではそう大きな集団ではない。

それでもミシガン、ウィスコンシン、ペンシルベニア、ジョージアといった接戦が予想される州で、そうした反発からバイデン支持者が投票に行かなかったり、民主党でも共和党でもない第3党の候補に票を投じたら、ドナルド・トランプ前大統領の返り咲きに道を開くことになる。

「バイデン大統領のやっていることは火遊びだ」と、人権団体「パレスチナ人の人権のためのUSキャンペーン(USCPR)」のアフマド・アブズネイド事務局長は本誌に語った。「人々がガザでの死や破壊を繰り返し目にするなかで、イスラエルに対するアメリカの支援への疑問は高まっている」

アメリカの選挙では通常、外交政策は経済や国内問題ほど主要な争点にはならない。だが共和党のリチャード・ニクソンが勝利した68年の大統領選では、外交政策が大きな争点となった。当時アメリカ各地の大学では、民主党政権によるベトナム戦争への介入強化に反対するデモが頻発していた。

一方で2014年の大統領選では、対テロ戦争を率いたジョージ・W・ブッシュが再選された。反戦の機運が高まりつつあったにもかかわらずだ。バイデンはイスラエルによるガザ攻撃がアメリカ政治に与える影響を十分に理解していると、バイデンの考えをよく知る人々は言う。

票の取りこぼしは許されない

進歩派がガザでの戦争に反対している点について、バイデンは「懸念を抱いている」と、チャック・ヘーゲル元国防長官は本誌に語った。

それでもバイデンは、対イスラエル政策であれ他の外交政策であれ、政治的影響について考えるのではなく「自分が正しい行動だと思う」ことを実行しようとしていると言う。「全体的に見て、彼はいい仕事をしてきた」とヘーゲルは述べた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ドイツ銀、第3四半期は黒字回復 訴訟引当金戻し入れ

ビジネス

JDI、中国安徽省の工場立ち上げで最終契約に至らず

ビジネス

ボルボ・カーズの第3四半期、利益予想上回る 通年見

ビジネス

午後3時のドルは152円前半、「トランプトレード」
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:米大統領選 イスラエルリスク
特集:米大統領選 イスラエルリスク
2024年10月29日号(10/22発売)

イスラエル支持でカマラ・ハリスが失う「イスラム教徒票」が大統領選の勝負を分ける

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶりに大接近、肉眼でも観測可能
  • 2
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」ものはどれ?
  • 3
    リアリストが日本被団協のノーベル平和賞受賞に思うこと
  • 4
    逃げ場はゼロ...ロシア軍の演習場を襲うウクライナ「…
  • 5
    トルコの古代遺跡に「ペルセウス座流星群」が降り注ぐ
  • 6
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア…
  • 7
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の…
  • 8
    中国経済が失速しても世界経済の底は抜けない
  • 9
    ウクライナ兵捕虜を処刑し始めたロシア軍。怖がらせ…
  • 10
    「ハリスがバイデンにクーデター」「ライオンのトレ…
  • 1
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶりに大接近、肉眼でも観測可能
  • 2
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の北朝鮮兵による「ブリヤート特別大隊」を待つ激戦地
  • 3
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア兵の正面に「竜の歯」 夜間に何者かが設置か(クルスク州)
  • 4
    韓国著作権団体、ノーベル賞受賞の韓江に教科書掲載料…
  • 5
    目撃された真っ白な「謎のキツネ」? 専門家も驚くそ…
  • 6
    ウクライナ兵捕虜を処刑し始めたロシア軍。怖がらせ…
  • 7
    逃げ場はゼロ...ロシア軍の演習場を襲うウクライナ「…
  • 8
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 9
    裁判沙汰になった300年前の沈没船、残骸発見→最新調…
  • 10
    北朝鮮を訪問したプーチン、金正恩の隣で「ものすご…
  • 1
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「自由がないのは気の毒」「野球は超人的」
  • 2
    「地球が作り得る最大のハリケーン」が間もなくフロリダ上陸、「避難しなければ死ぬ」レベル
  • 3
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶりに大接近、肉眼でも観測可能
  • 4
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の…
  • 5
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア…
  • 6
    ウクライナに供与したF16がまた墜落?活躍する姿はど…
  • 7
    漫画、アニメの「次」のコンテンツは中国もうらやむ…
  • 8
    エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明…
  • 9
    ウクライナ軍、ドローンに続く「新兵器」と期待する…
  • 10
    韓国著作権団体、ノーベル賞受賞の韓江に教科書掲載料…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中