最新記事
韓国総選挙

不人気すぎる韓国・尹錫悦大統領の自滅...国民の力が大敗した7つの理由

An Anti-Yoon Vote

2024年4月16日(火)12時50分
ミッチ・シン

■大統領の過剰警護

今年1月に行われた式典で、野党・進歩党の姜聖熙(カン・ソンヒ)議員は会場を埋め尽くした政界関係者と同様、尹と握手を交わし何かを訴えた。数秒後、彼は大統領の警護員らに手で口を塞がれ、数人がかりで担ぎ出されるようにして、有無を言わさず会場から引きずり出された。

これについて大統領室はルールにのっとった対応だと主張したが、国内のニュースサイトで公開された動画を見る限り、姜はただ尹に話しかけただけだ。危険を及ぼすような行為や式典を妨害するような行為はしていない。

国立の工科大学・韓国科学技術院(KAIST)で2月に行われた卒業式でも、尹が祝賀スピーチを行っている最中に大声を上げた学生が大統領警護隊に無理やり引きずり出される騒ぎが起きた。

警護員らは式服を着用し、卒業生の列に紛れ込んでいた。そして学生が叫ぶと、即座に飛び付いて身柄を確保した。

こうした騒ぎは尹のイメージを悪化させるだけだ。反対意見に耳を貸さず、力ずくで批判を抑え込む強権的な指導者とみられても仕方がない。特に言論の自由を重視するリベラル派は大統領の過剰な警護に強く反発している。

■離党者の当選

リベラル派の共に民主党が有権者の圧倒的な支持を得るなか、与党・国民の力の幹部らをさらに悔しがらせる大逆転劇が起きた。国民の力の党首の座を追われ、離党した李俊鍚(イ・ジュンソク)は、22年の選挙で大統領候補の尹の陣営と地元の国会議員候補の陣営を率いた人物だ。その李が新党を結成し、今回の選挙では首都ソウル南西の華城市の選挙区から出馬。大方の予想を裏切って当選を果たしたのだ。

newsweekjp_20240415025513.jpg

尹とたもとを分かった李俊錫(中央)は新党から出馬、当選を果たした YONHAP NEWS/AFLO

投票日までの数週間、李は支持率で共に民主党の対抗馬の後塵を拝していた。だがフタを開けてみれば、得票率3.38ポイント差で議席を獲得。勝利演説で李は尹に呼びかけた。私がなぜ国民の力を離党し、新党を結成して選挙に出なければならなかったか、胸に手を当てて考えてみろ、と。

李に言わせれば、尹は党の若き指導者だった自分を蹴落として党首の座に居座った憎き敵だ。李が離党後に結成した「改革新党」は今回の選挙で3議席を獲得できた。

韓国では今回の選挙で与党が惨敗したのは、大統領の不人気のせいだとみる向きが多い。離党した李が勝利したことで、尹がいなければ、与党候補はもっと票を伸ばせたとの声がますます高まりそうだ。27年3月の次期大統領選をにらんで、与党内の主流派はもはや「外様」の尹に遠慮せず、勢力拡大を目指すだろう。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ米大統領、日韓などアジア歴訪 中国と「ディ

ビジネス

ムーディーズ、フランスの見通し「ネガティブ」に修正

ワールド

米国、コロンビア大統領に制裁 麻薬対策せずと非難

ワールド

再送-タイのシリキット王太后が93歳で死去、王室に
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 2
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任務戦闘艦を進水 
  • 3
    「信じられない...」レストランで泣いている女性の元に現れた「1羽の野鳥」が取った「まさかの行動」にSNS涙
  • 4
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 5
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 6
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 7
    「宇宙人の乗り物」が太陽系内に...? Xデーは10月2…
  • 8
    メーガン妃の「お尻」に手を伸ばすヘンリー王子、注…
  • 9
    為替は先が読みにくい?「ドル以外」に目を向けると…
  • 10
    アメリカの現状に「重なりすぎて怖い」...映画『ワン…
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 3
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 4
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 5
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 8
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 9
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 10
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中