最新記事
ドローン

アメリカ製ドローンはウクライナで役に立たなかった

America's Drones Are Too Expensive for Ukraine

2024年4月16日(火)12時13分
ジョン・ジャクソン

ウクライナ供与の話もあったアメリカの高性能ドローン、MQ-9リーパー(4月8日、ニューメキシコ州ホロマン空軍基地) USA TODAY NETWORK

<開戦当初に初回の供与を受けて以降、ウクライナ軍はしだいにアメリカ製ドローンではなく中国製ドローンを使うようになった。値段が高いのも理由の一つだが、ウクライナでの戦争には使えなかったのだ>

ウクライナはロシア軍との戦いで、ドローン(無人機)に大きく依存してきた。だが今後ウクライナが使用するドローンの多くはアメリカ製ではなくなるだろう。アメリカ製ドローンは価格が高すぎるからだ。だがそれだけではない。

【画像・動画】ウクライナ人の叡智を詰め込んだ国産ドローンたち

ウクライナ戦争におけるアメリカ製ドローンの問題点については、米メディアが最近、詳しく取り上げ始めた。ウクライナにとってはあまりに高価な上、ロシア軍との戦いでは大して役に立たないと、4月11日付のウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が伝えた。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が2022年2月に始めた戦争では、ロシア、ウクライナ双方にとって、ドローンは価値ある兵器となっている。ウクライナ軍の巧みなドローン攻撃で、クリミア半島ではロシアが守勢に立たされたと、軍事アナリストは評価。驚くことに、ウクライナが飛ばしたドローンは国境から遠く離れたロシアの首都モスクワにも到達している。

だが開戦当初に最初の供与分がアメリカからが送られた後、ウクライナはしだいに中国製ドローンを使用するようになった。ウクライナがロシアの親密な盟友である中国から購入しているのは部品だけではない。ウクライナ政府は中国から「ドローン本体を大量に調達するルートを見いだした」と、WSJは報じている。

米国防総省も問題を認識

中国製を使うのは、「アメリカ製の商用ドローンは中国製のそれに比べ、何万ドルも高くつく」からだと、WSJは説明している。なにしろウクライナ軍が使用するドローンは、毎月ざっと1万機にも上る。

ウクライナのドローン計画を管轄するDX省のゲオルギ・ドゥビンスキー副大臣はアメリカ製ドローンをもっと試したいのはやまやまだが、われわれは「コスト効率のよい解決策を探っている」とWSJに話している。

価格もさることながら、アメリカ製ドローンはロシア軍に探知されやすい。また「誤作動が起きやすく、修理が難しい」こともあり、安価でも戦場で使える中国製に軍配が上がると、WSJは解説している。

「アメリカ製ドローンはどのクラスも、ほかの兵器システムほど性能がよくないと、一般的に見られている」と、ウクライナにドローンを提供しているシリコンバレーの企業・スカイディオの幹部はWSJに語っている。

この問題に関する本誌の問い合わせに対し、米国務省の報道官は、われわれは「ウクライナのパートナーが現在の戦闘環境において、とりわけ電子戦におけるロシアの高度な戦闘能力に対して、ドローンを使用する際に直面している困難な問題は重々承知している」と、文書で回答した。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

エヌビディア決算に注目、AI業界の試金石に=今週の

ビジネス

FRB、9月利下げ判断にさらなるデータ必要=セント

ワールド

米、シカゴへ州兵数千人9月動員も 国防総省が計画策

ワールド

ロシア・クルスク原発で一時火災、ウクライナ無人機攻
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋肉は「神経の従者」だった
  • 2
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 3
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」の正体...医師が回答した「人獣共通感染症」とは
  • 4
    顔面が「異様な突起」に覆われたリス...「触手の生え…
  • 5
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 6
    【写真特集】「世界最大の湖」カスピ海が縮んでいく…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    株価12倍の大勝利...「祖父の七光り」ではなかった、…
  • 9
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 10
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 3
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 4
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 5
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 6
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 7
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 8
    「このクマ、絶対爆笑してる」水槽の前に立つ女の子…
  • 9
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 10
    3本足の「親友」を優しく見守る姿が泣ける!ラブラ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中