最新記事
絶滅種の復活

絶滅した氷河時代の巨大動物「マンモス」が2028年に地上に復活する【ゲノム編集最前線】

Bringing Back the Mammoth

2024年4月5日(金)18時55分
ベン・ラム(コロッサル・バイオサイエンシーズCEO・共同創業者)、エリオナ・ハイソリ(同社生物科学部門責任者)

newsweekjp_20240405035140.jpg

COLOSSAL BIOSCIENCES

マンモスを復活させたら、次の課題はレジリエンス、つまり野生で生き延び、繁殖する能力を与えること。

そのためには致命的な疾患であるゾウ内皮向性ヘルペスウイルス(EEHV)などの問題に対処しなければならない。象牙目的の密猟で大量に殺されないよう、牙を短くする遺伝子を組み込むことも課題の1つになるかもしれない。

ゾウの保護にも役立つ

私たちは同時並行的に諸課題に取り組んでいる。ゲノム編集を進めながら、生まれた赤ちゃんの飼育方法を研究するといった具合だ。「1つクリアしてから次に進む」やり方では、赤ちゃん誕生までに膨大な時間がかかるだろう。

第2世代では遺伝子操作で新たな特徴を持たせ、亜種や別種をつくるなど遺伝的多様性を実現し異系交配ができるようにしたい。私たちが目指すのは、持続可能で健全な個体群を野生に帰すことだ。

種の保存と絶滅種の復活に対する私たちの大きな貢献の1つに、ゾウの生殖の仕組みを深く探った基礎研究がある。私たちは学術機関と共同で進める研究開発に力を入れていて、大学の研究所などに勤務する50人超の博士研究員に助成を行っている。

EEHVはゾウの赤ん坊の20%を死に追いやる恐ろしいウイルスで、対策が必要だ。だが投資対象としては大きい市場が見込めるわけもなく、これまで十分な技術やリソースが投じられてきたとはいえない。そこで私たちの研究が役に立つかもしれない。

また、ゾウの死因としてEEHVに次いで多いのが、密猟や生息地の環境破壊といった人間由来の問題だ。その解決にも私たちは努めなければならない。

今後も人類は、ゾウの生息地を侵食し続けるだろう。一方でマンモスは更新世以降、亜寒帯の針葉樹林タイガや、さらに高緯度のツンドラで生息していた。

つまり、マンモスのゲノムや失われた遺伝子を使って現生種のゾウを寒冷地に適応させることができれば、タイガやツンドラといった場所でゾウを野に放つことも可能になるわけだ。

また、マンモスを復活させて増やすことができれば、生態系を補完し、生物多様性を高める効果も見込める。かつての豊かな生態系を取り戻す一助になるかもしれない。

コロッサルにとってケナガマンモスの復活は中核となるプロジェクトだが、その一方で、現生種のゾウの保全にももっと力を注がなければ、いつかゾウという種も失われてしまうかもしれない。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米国防総省、イラン情勢にらみ中東に空母増派へ 最新

ワールド

五輪=CAS、「追悼ヘルメット」のウクライナ選手の

ワールド

米大統領上級顧問、鉄鋼・アルミ関税引き下げ計画を否

ワールド

ドイツ首相、米欧の関係再構築呼びかけ 防衛力強化の
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    50歳には「まったく見えない」...信じられないレベルの「若見え」な女性の写真にSNS震撼
  • 4
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 5
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    毛沢東への回帰? それとも進化? 終身支配へ突き…
  • 8
    「ドルも弱い」なのになぜ、円安が進む? 「ドル以外…
  • 9
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 10
    「賢明な権威主義」は自由主義に勝る? 自由がない…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 6
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 7
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 8
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 9
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 10
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 8
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中